RKRN×携帯獣

□毒虫も恋をするらしい
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生物委員会活動日誌

某月某日
伊賀崎孫兵の飼育小屋が壁の木材が腐食した事により破損。
中にいた毒虫達の内、毒トカゲの大山兄弟と毒ガエルのきみ太郎並びに大ムカデの三四郎が脱走。委員会総出で捕獲活動を行った。





「大山きょうだーい!」
「きみ太郎ー!三四郎ー!!何処行ったー?!」
「木下先生!竹谷くん!また毒虫脱走したんですか?」

俺達と顧問の木下先生が虫取り網片手に学園中を走り回っているとアヤノさんが通りかかった。学園長先生から他の先生方への言伝を頼まれてこの生物委員会に顔を出している木下先生で最後らしい。

「そうなんだ。危ないからアヤノはあまり草が生い茂っている場所に近付かないよう「私も探すの手伝います!」何だと?!」
「だ、駄目です!危険過ぎます!!」
「そうですよ!もし噛まれたり刺されたりしたら…」
「大丈夫、私の世界にも毒を持ってるポケモンは沢山いるわ。それに…」
「「それに?」」
「『ハブネークの居場所はハブネークが知っている』…こっちだと『蛇の道は蛇』だっけ?毒虫が行きそうな場所なら毒虫に訊くのが一番よ。いらっしゃい、ベニヒメ!」

そう言うとアヤノさんは赤と白の球を空高く放り投げる。
中から出て来たのは紅い体に紫の模様が付いた毒々しい色合いの人一人乗せて移動出来るんじゃないかって位に巨大なムカデだった。

「キィー!!」
「「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!」」
「紹介しますね、メガムカデポケモン・ペンドラーの雌で名前はベニヒメです。ちなみに『メガ』は私の世界で使われている大きさの単位で…直訳すると『物凄く大きなムカデ』って意味になります」
「いくら何でも大き過ぎるだろこれは…」
「な…何て美しいんだ…!この如何にも『猛毒持ってます』と言わんばかりの艶やかな配色…ああ、ゴメンねジュンコ!勿論君が一番綺麗だよ!!」
「やっぱり孫兵くんには分かるんだねー。私もコンテストとかには興味無いんだけどさ、ベニヒメの体ってすっごく綺麗な色だと「アヤノさん!話が脱線しかけてます!!」…ごめん」

一年生達が突然現れた巨大なムカデに体を寄せ合ってびびるわ木下先生は茫然とするわ孫兵とアヤノさんはベニヒメの体の色で語り合い始めそうになるわで訳分からない事になりそうだった場を何とか収めて本題に戻した。
こんな時六年生が欲しい…いや、六年生もベニヒメにびっくりしたら意味無いんだけどさ。

「で、このベニヒメにも毒虫探しに協力してもらうって事でいいんですか?」
「うん。この子の進化…成長する前のポケモンをフシデって言うんだけどね、フシデは頭と尻尾にある触角で空気の揺れを感じ取って獲物の位置や様子を把握する事が出来るの。勿論、成長したペンドラーにもその触角は残っているわ」
「おほー…すげー…」
「なるほど、こいつの触角を使って隠れている毒虫達を探知するという訳か」
「そういう事です。それじゃあベニヒメ、お願いね」
「キィ」

頷いたベニヒメが頭と尻尾の触角を小刻みに動かす。すると何かを感じ取ったのかくるりと体の向きを変えて歩き始めた。

「生物委員会!ベニヒメの跡を追うぞ!!」
「「はい!」」

そして数十分後、今俺達の持つ虫かごには無事全ての毒虫達が収まっている。ベニヒメが次から次へと見つけ出してくれたのだ。

「すっごーい!僕こんな早い時間に毒虫捕まえ終わったの初めてです!!」
「いつも学園中走り回って捕まえ終わった頃には夕暮れだもんね〜」
「ひょっとしたら最短記録かも」
「ベニヒメちゃん…ちょっと怖くなくなってきました…」 
「大山兄弟!きみ太郎!三四郎!心配したんだぞ〜!!」
「ありがとうアヤノさん。本当助かった…」
「どういたしまして。木下先生、飼育小屋の修理も今日中にするんですよね?学園長から頼まれた言伝で日中の用事は終わりなのでお手伝いしますよ。用具委員会の皆にも声掛けてきますね」
「おお、すまんな」





破損した壁はアヤノさん及び用具委員会と協力して補修。
補修が完了した後、虫かごに入れていた毒虫達を小屋に戻してから他の動物達の世話をした所で本日の委員会活動は無事終了。

本日の活動に関するまとめ
アヤノさんがまた毒虫達が脱走した時はベニヒメを貸すから遠慮無く呼んでくれと言っていたが彼女達に何度も頼ってはいけないと思うので次の予算会議では何が何でも飼育小屋をもっと頑丈にする為の予算を確保したい所存です。





某月某日
先日の脱走事件の折に用具委員会が補修してくれた為、小屋の破損は無し。
しかしどこかに隙間があったのか大ムカデの三四郎だけが脱走。
慌てて捜索を開始したがアヤノさんが庭の掃き掃除をしている側で発見し無事捕獲。
アヤノさんに怪我は無し。
三四郎が脱走に使用したと思われる隙間を確認。用具委員会を呼ぶ程の物でも無かったので自分達で塞いだ。

某月某日
孫兵が他の毒虫達に食事を与えている間に大ムカデの三四郎が脱走。
土井先生の依頼で次の授業にて使用する資料を運搬していたアヤノさんが歩いていた廊下で捕獲。
アヤノさんに怪我は無し。
毒虫に食事を与える際には扉をしっかり閉じるよう孫兵に注意した。
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