RKRN×携帯獣

□思いの外喜ばれました
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「ルリー、落ち葉集め終わったから捨てる用の麻袋持ってきてー!」
「ルゥ!」

この世界で、この忍術学園で暮らす事になってもうすぐ丸一ヶ月が経とうとしている。
最初は文化の違いと技術の遅れ具合に戸惑いもしたけど今では釜でご飯を炊いたり薪を割るのも手慣れた物だし文字もちゃんと読み書き出来るようになった。
そんなこんなで少しずつではあるがこちらに馴染み始めてきた私にも一応悩みはある訳で…

「名前…いつ呼ぼうかなあ…」
「ルゥ?」

ここでお世話になる事が決まった時、六年生の皆に年が近いし私の方が年上なのだから名前で呼んでくれと言われたのだが居候の身でいきなり名前呼びなんて出来ないと思った私は「慣れたら名前で呼ぶ」と彼らに約束してした。
だが私が元いた世界ではトレーナー同士の視線が合った時に行われる野良試合やコンテスト、リーグ等の公式試合にしたって何にしたって『●●シティ(タウン)の○○』と言う風にフルネームではなく出身地と名前だけを名乗るのが主流。
名字で呼ばれるのはオーキド博士を始めとしたポケモン研究者の権威である方々や『デボンコーポレーション』の社長であるツワブキ氏等一握りの権力者だけなのだ。
それを無理…はしてないけど最初から名字で呼んでいた物だからすっかりそちらの方が私の中で定着してしまい、なかなか名前呼びに切り替えられなかったりする。
もう一ヶ月経つし学園の皆も体の大きなベニヒメやヒスイをボールから出しても驚かなくなった。そろそろ呼んでもいい頃合いだと思っている…思ってはいるのだが…

「こういうのってタイミング難しいよね…!」
「ルゥ」

皆と約束したし今よりもっと仲良くなりたいから名前で呼んでみたいのも事実なんだけどなー…
そんな思いを込めた溜め息を一つ零すと何処からともなく声が聞こえてきた。

「………い………ど………ーん!」
「この声…七松くん?でも姿見当たらないし…」
「……いけ……ど……ーん!!」
「下から…?まさか、そんな事ある訳…」
いけいけどんどーん!!
そのまさかだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!

七松小平太 の あなをほる 攻撃 !
何故かそんな文章が脳裏を過ぎった。七松くんはポケモンじゃないよ私!

「おおアヤノちゃん!こんな所で何をやってるんだ?」
「庭の落ち葉をお掃除してたんだけど…そういう七松くんは?」
「体育委員会の活動で塹壕掘りだ!ほら、滝夜叉丸達も…あれ?滝夜叉丸、三之助、四郎兵衛、金吾ー?何処行ったー??」
「七松くん…後ろ後ろ…」
「うん?」

私が呆れながらきょろきょろと見回す七松くんの背後を指さし、彼がそちらを見ると今まで掘り進めてきた塹壕の奥からへろへろになった滝夜叉丸くん達が片手に塹壕を掘る為に使ったのであろうクナイを握り締めながらやって来た。ちなみに滝夜叉丸くんのもう片方の手には縄が握られ、その先は『無自覚な方向音痴』なのだという三之助くんの腰に巻かれていた。

「滝夜叉丸くんいつもこんな大変な思いしてるんだね…お疲れ様…」
「アヤノさん…分かってくれますか…!」
「あ、アヤノさんだ」
「アヤノさーん…僕達もう駄目です…」
「限界なんだなー…」
「何だお前達情けないぞ!これしきの距離で」
「…ちなみにどこから掘り始めたの?」
「グラウンドからずーっと止まらずに!」

今私達がいるのは六年長屋の近く。ここからグラウンドのある校舎まではそこそこ距離もある。
そこをノンストップで掘ってきたとなると…また食満くん怒るだろうなこれ…

「とにかく一回休憩しなきゃ駄目よ。ルリ、私の部屋から手拭いを何枚か持ってきて。出来れば途中で水に濡らしてきてちょうだい」
「ルゥ!」

元気一杯な返事をして私の部屋がある先生方の長屋へと駆け出していくルリを見送ってから六年長屋の縁側に皆を腰掛けさせる。

「私あの子覚えてるぞ、アヤノちゃんが初めてこの学園に来た時学園長に見せてた子だ」
「そっか、あの時七松くん達六年生は天井裏にいたんだよね。あの子はルリ。リオルって種族の女の子よ」
「リオルはどんなポケモンなんだな?」
「格闘タイプ…文字通り格闘技を使う事に優れた属性の持ち主よ。しなやかで強靭な体をしていて一晩で山三つ、谷二つを走り抜けると言われているわ」
「へー!それは是非とも一緒に走ってみたいものだな!!」
「うん、よかったら今度誘ってあげて。体動かすの大好きな子だからきっと喜ぶわ」
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