RKRN×携帯獣

□その名が表すは結び付き
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イーブイ しんかポケモン

その別名が示す通り、不安定な遺伝子により様々なタイプへの進化の可能性を持つ特殊なポケモン。
“ほのおのいし”を使えば炎タイプのブースター、“みずのいし”で水タイプのシャワーズ、“かみなりのいし”なら電気タイプのサンダース、トレーナーと一定以上の信頼関係を築いた上で太陽の光を浴びてレベルアップすればエスパータイプのエーフィ、浴びたのが月の光なら悪タイプのブラッキー、自然豊かな森の中にいれば草タイプのリーフィア、極寒の地にいれば氷タイプのグレイシア。
その進化先の多彩さ故にどれに進化させようか悩むトレーナーも少なくはない。
だが今ここで悩んでいるのはトレーナーではなく忍者を志す一人の少年だった。

「うーん…やっぱり素早いサンダース…いや、水に溶けて隠密任務に向いてそうなシャワーズも捨てがたい…コハルちゃんが尻尾を刀にした時の強さを見てるとリーフィアもなかなか…」
「迷ってるね雷蔵くん」
「そりゃ迷いますよ、これだけ候補があれば。アヤノさんはコハルちゃんを進化させる時悩まなかったんですか?」

そう言いながら少年−雷蔵が眺めているのはアヤノが元の世界から持ち込んだポケモン図鑑。その周りには他の五年生が集まって横から後からぎゅっと身を寄せ合って画面を覗き込んでいる。

「うん、決めるのは割と早かったよ。一番最初に貰ったカレンが炎タイプだから進化させるならリーフィアかなって。草タイプは炎タイプの苦手な属性には大体強いから」
「なるほど…」
「つーかこれは雷蔵じゃなくても悩むと思う」
「雷蔵まだ決まらないのー?俺も見たーい」
「勘右衛門、そんなに急かすな。決まる物も決まらなくなるだろうが」
「そう言う三郎も邪魔!図鑑が見えないのだ!!」

アヤノのポケモンと接する事にもすっかり慣れた忍術学園の人々。最近では彼女に「他にどんなポケモンがいるのか」と質問しに来る者も忍たま・教師を問わず現れ始めた。
そこでアヤノは時間がある時、希望する者にポケモン図鑑を閲覧させてあげる事にした。勿論、今閲覧している五年生の面々も希望者である。
そして雷蔵が今迷っているのは「もしも自分がトレーナーならイーブイを何に進化させるか」。
アヤノからポケモンに起こる『進化』と呼ばれる急成長とコハルの進化前であるイーブイは多岐に渡る進化先を持つ事を教えてもらったらその迷いに至ったらしい。

「私ね、雷蔵くんって今みたいに何に進化させようか迷いに迷ってる間にエーフィに進化させちゃいそうな気がする」
「エーフィ…ですか?」
「うん。雷蔵くんポケモンの事大切に育ててくれそうだし、懐くのも凄く早いと思うの。それにいつもにこにこ笑ってて太陽みたいだしエーフィが似合うかなーって」
「いや、そんな…」
「おほー、雷蔵が照れてる」
「雷蔵がエーフィなら私は断然こいつだな。 不破雷蔵ある所、鉢屋三郎ありってね 」

雷蔵の隣から三郎が腕を伸ばして図鑑を操作する。つい先程までエーフィを映していたその画面はブラッキーに変わった。

「何か納得の選択なのだ」
「そうね。三郎くんはブラッキーっぽいかも」
「お前変装使った悪ふざけとか悪巧み好きだもんな。悪タイプ似合いそう」
「はっはっはっ、喧嘩を売っているなら言い値で買うぞ八左ヱ門」
「いでででで!ちょ、髪の毛引っ張るなよ!!」
「兵助はどれに進化させたい派?」
「そうだなー」
「…よくこの騒ぎの中普通に選べるわねい組のお二人さん」
「いつもの事だから慣れたのだ。…うん、俺はこいつが良いな」

三郎と八左ヱ門がぎゃあぎゃあと騒ぐ中、兵助が選んだのはキリッとした表情が凛々しい氷タイプのグレイシアだ。

「どうしてグレイシアなんだ?」
「グレイシアって別名“しんせつポケモン”って呼ばれてるんだろ?深雪って豆腐みたいに真っ白で綺麗じゃないか!」
「「あー…」」

彼が物事を判断する基準はあくまでも豆腐らしい。何とも兵助らしい理由に全員が脱力した。

「まあ大体想像通りの理由だけど」
「兵助くん本当にお豆腐好きなのね」
「で、八左ヱ門なら何に進化させる?ついでに理由も述べるのだ」
「俺か?俺はブースターだな!進化した姿が一番ふわふわしてて触り心地良さそう」
「見た目重視か」
「兵助だって似たようなもんだろうが」
「そしてそのブースターもいつの間にか毛並みぼさぼさになってタカ丸さんに八左ヱ門共々追い掛け回されるに一票」
止めろ三郎洒落になんねえ!!

刹那、八左ヱ門の脳裏に手入れの行き届いてない髪の毛が絡むと人格が豹変する年上の後輩が鋏片手に自分とブースターを追い掛ける光景が浮かんだ。
背筋に悪寒が走ったのは気のせいではないだろう。

「はいはーい!俺この子が良い!!」

元気良く挙手した勘右衛門の片手にあったのはアヤノがこちらの世界へ来るきっかけ…テンガン山でアルセウスを待つ為に行った山籠もりのお供にと自宅から持ち出した最新の研究論文。
そこに載っているのは…

「ニンフィア?」

アヤノが山籠もりする直前に学会で発表された新しいタイプ“フェアリー”に関する文章と新タイプ発見に伴い明らかとなったイーブイの新しい進化系のカラー写真だ。
しかしニンフィアはまだ発見されたばかりで詳しい生態やイーブイから進化する条件が明らかにされていない。
故に勘右衛門がニンフィアを選んだ理由は八左ヱ門同様に外見かと彼以外の全員が思った。
…が、その考えは勘右衛門本人によって否定される事となる。

「そう!だってこの子の別名すっごい気に入ったんだもん、俺達みたいでさ!!」

満面の笑みで勘右衛門が指差した先にはアヤノが自らの世界の文字を忍たま達にも分かるようにと翻訳した文章を貼り付けたメモ用紙。
それを読んだアヤノは「確かにそうね」と微笑ましい物を見る目をしながら、他の四人は照れ臭そうに…だがどこか嬉しそうにしながら笑みを浮かべた。





その名が表すは結び付き
仲の良さならどの学年にも負けません



(もう私達全員ニンフィアで良いんじゃないか?)
(えー、俺グレイシアが良いのだー)
(俺もブースターが良い)
(うーんニンフィアか…でもやっぱりエーフィも…)
(じゃあニンフィアともう一匹違うイーブイ進化系の二匹持つのはどうかしら?)
(アヤノさんナイスアイデア!と言う訳だから勘右衛門お前もう一匹選べ!!)
(んな無茶苦茶な!)





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