RKRN×携帯獣

□彼女の常識は私達の非常識
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今期の予算会議が近付いてきたある日の事、前回の会議で仕掛けた罠が思い通りに作動せず用具委員会の漆喰砲で漆喰まみれにされてしまった我々作法委員会は二度とあのような屈辱が無いようにと前回以上に入念に罠を仕掛ける事にした。

「さて、どこに仕掛けるか」
「やっぱり会計委員室だと思います」
「あとは安藤先生のお部屋とか?」
「ふむ…」

普段は会計委員室で行われる会議だが前回の会議ではドクアジロガサの忍者が学園長先生の暗殺をしに学園へ侵入した為、そいつのボロを出させるのに急遽安藤先生の部屋を使った。
思い通りに罠が作動しなかったのは場所が変更になったせいで慌てて仕掛け直した急拵えの物だったのもあるだろう。

「なら、今回は最初から両方に仕掛けておくと言うのはどうでしょう?それならどちらに転んでも問題無いでしょうし」
「成る程。お前達はどう思う?」
「「賛成でーす!」」

思い立ったが吉日。早速仕掛けを設置しようと手始めに安藤先生の部屋の庭先を訪れた所で庭掃除の途中だったアヤノがやって来た。
あわや言い付けられて計画が水泡に帰すかと思われたが彼女が安藤先生や文次郎には内緒にしておく代わりに罠作りを見学したいと言うので勿論快諾した。見学だけで予算獲得の勝率が上がるなら安い物だ。
しかし…

「おいアヤノ」
「どうしたの仙蔵くん」
「さっきからずっと喜八郎が穴を掘るのを眺めているが飽きないのか?」

私がそう問うと彼女は「うーん」と唸りながら考える仕草をした後答えた。

「そうだね、飽きないかな。喜八郎くんの掘った穴を見てると何だか懐かしい気分になるし」
「懐かしい…ですか?」
「私の生まれ故郷があるシンオウ地方には地下に巨大な通路があってね、皆“たんけんセット”って道具を使ってそこに潜るんだ」
「潜ってどうするんですか?」
「えーっとね、秘密基地…隠れ家を作ってそこに好きなポケモンのぬいぐるみや家具を置いて自分好みに改装したり大昔のポケモンを復元出来る化石や進化に必要な“いし”を発掘したりするの」
「隠れ家!」
「楽しそうですねー!」

兵太夫や伝七の目が好奇心で輝く。
やはり、あの位の年の子は『隠れ家』と言う単語に憧れがあるようだ。
かく言う私もそんな時期が無かったといえば嘘になるが…

「うん、楽しいよ。ああそうだ、旗取りなんてのもあったっけ」
「旗取り?」
「地下通路の中に作った秘密基地を使った遊びだよ。敵の秘密基地を見付けて、そこにある旗を自分の秘密基地へ持って帰ったら勝ちなの」
「ほう、それは面白そうだな」
「僕達の授業でも使えそうですね」
「勿論相手も旗を取られないよう一生懸命でさ、自分の秘密基地の周りに罠を仕掛けたりするんだー」
「「罠?!」」

基本である落とし穴は勿論の事、周囲を泡に囲まれそれらを一つずつ、なおかつ全て割らないと身動きが取れなくなる物や矢印が書かれており、踏むとその方向に吹き飛ばされてしまう物。
その他にも自分の進みたい方向とは全く違う方向に歩かされてしまう物や炎が取り囲む物等…
彼女が次々と挙げる罠の種類に私達はただただ唖然とするばかりだ。

「アヤノ…」
「何?」
お前の世界では地方ぐるみで忍者の育成でもしているのか?
どこをどう解釈したらその結論に至るのか教えてくれるかな





彼女の常識は私達の非常識
罠のレベルが遊びに使う物では無いと思うんだが



(えー、そうかしら?私達の間じゃ普通だったけど)
(だから!その感覚がおかしいって言ってるんだ!!)
(道理でアヤノさんってば綾部先輩の落とし穴や競合地域にある罠とか僕と三治郎のからくりに引っ掛かってもすぐ脱出出来ちゃう筈だよねー)
(下手するとそれ以上に厄介な罠で遊んでるんだもんな…)
(いいなー、地下通路で罠設置し放題)
(やばい、綾部先輩のトラパースイッチ入っちゃった)





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