RKRN×携帯獣
□迷子の迷子の妖精さん
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「アヤノちゃーん!アヤノちゃんはどこだー?!」
「どうしたの小平太くん、そんなに大声出して」
「体育委員会の皆と授業で使うマラソンコースの下見で裏々山をひとっ走りしてたら見てくれ!こんなに大きな卵を見付けたんだ!!」
「っ!?」
「なあ、これって食べられると思うか?食堂のおばちゃんの所に持っていこうと思ってるんだが」
「小平太くん…
それ、ポケモンのタマゴ…!」
「『生まれるまでまだまだかかりそう』か…良かった、とりあえず中の子に異常は無いみたい」
慌てて小平太から卵を回収したアヤノちゃん。すぐにポケモン図鑑に搭載されているポケモンの体調を調べる機能で卵を調べると、表示された文章は孵化までに時間を要すると知らせる物であったらしく彼女はほっと安堵の溜め息を吐いた。
「でもアヤノちゃんがこの世界に来てからそこそこ経つよね?ポケモンの卵ってそんなに孵化に時間が掛かる物なの??」
「ポケモンのタマゴは側に元気なポケモンがいる事によって孵化が促されるの。おそらく私の手持ち達以外のポケモンがいないこの世界にタマゴだけで来た事によって成長が止まっていたのね」
その日から日替わりでアヤノちゃんのポケモン達が卵の傍らに寄り添うようになった。
カレンちゃんが温めているのを「お前、尻尾の炎で目玉焼きにするなよ?」と茶化した文次郎が丸焼きにされたり、ジュジュちゃんが図書室に持ち込んだ卵を長次が物凄い仏頂面(上機嫌)で撫でるのを目撃したり、性懲りもなく戸部先生に挑戦しようとした花房牧之介が卵を発見して食べ物だと思って持ち出そうとしたのをコハルちゃんに見付かって追い払われたり、ベニヒメちゃんが卵当番になった時に「誰との卵ですか!まさか三四郎以外の誰かですか?!」と彼女と自分のペットである大ムカデの三四郎をくっつけようと奮闘している伊賀崎孫兵が興奮しているのを落ち着かせたり、ヒスイちゃんがいつもの池の近くで卵に付きっきりなせいで彼女と特に仲の良い綾部喜八郎が物凄く不満げだったり、手持ちの中で一番幼いルリちゃんが妹か弟が増えるのが嬉しいようではしゃぎ過ぎて体育委員会とのいけどんマラソンにまで卵を風呂敷で背負って連れて行こうとしたのをアヤノちゃんと一緒に止めたり。
様々な出来事を経ていよいよ卵の中から時折コツコツと内側から叩くような音が聞こえるようになってきた。
「この調子なら今日か明日にでも孵りそうだね。そう言えばどんな子が生まれるのかもう分かったりする?」
「うーん…完全に特定は出来ないけど私が向こうで最後にいた場所からしてこっちの世界に来る直前にいた山の山頂付近、しかも野外に生息しているポケモンだと思うんだよね。そうしたら…うん、7種類くらいに絞れるかな」
指折り数えるアヤノちゃんに「そうなんだ」と相槌を打ちつつ早く出ておいで、なんて思いながら卵を指で軽くちょんと突っついた途端
ピシッ
「へ?」
ピシピシピシピシピシッ
「うわあああああ!アヤノちゃん!!卵!卵にひびが!!どうしよう僕の不運で割れちゃったのかな?!」
「落ち着いて伊作くん!これ普通に孵化の瞬間が来ただけだから!!」
「なら良かった!!!!!」
ひびはあっという間に卵全体へと拡がり、卵がガタガタと一際激しく揺れたかと思えばパァン!と殻が弾け跳んで眩しい光が辺りを包み込む。
光が収まった頃合いを見計らってそっと目を開け卵があったその場所には手のひらに乗る程小さく、真っ白なポケモンがいた。
「生まれた…!ねえアヤノちゃん、この子って何て言うポケモンなんだい?」
「……………」
「…アヤノちゃん…?」
「…菜園行かなきゃ」
「何で?」
「おいでー」
「僕の声聞こえてる?!」
生まれたポケモンを手に乗せて突然移動し始めたアヤノちゃん。
到着した先は僕ら保健委員会の薬草や生物委員会の毒草、そして彼女が育てている別世界の木の実が植えられた学園内の菜園だ。
「あの辺りは毒草だから選んじゃ駄目よ?選ぶのはこの辺に生えているのにしてね」
「べべ」
「じゃあ選んでいらっしゃい」
そう言ってポケモンを菜園に送り出すアヤノちゃん。
暫くするとその子は一輪の白い花を持って戻ってきた。
「決まったの?」
「フラ〜♪」
「綺麗なお花ね、よく似合うわ。
……………何でフラベベのタマゴがテンガン山の山頂近くにあるのよー!?」
「ラベ?!」
「今驚いたの?!」