忍たま夢

□第2話
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「暦…本当に私に教えを請う気があるのか?」

女らしくなる手伝いを仙蔵に頼み込んで半ば無理矢理(半ばは要らない、無理矢理だ by仙蔵)了承してもらったその日の放課後。
私は早速作法委員会の活動場所へ向かい仙蔵の「とりあえず基本からだ。試しに茶を点ててみろ」と言う指示を受け実行した訳だが…

「あるに決まってるでしょ?何よいきなり」
「お前、ちゃんと出来てるじゃないか。教える必要性が全く感じられないぞ」

そう。
今私はそれはもう見事な手際の良さで茶を点てている最中なのだ。

「六年間この学園に在籍して山本シナ先生の教えを受けてるのに出来ない方がおかしいって。第一、私元々行儀見習いだけするつもりでここに入学したから作法はしっかり勉強してたし」
「…私の記憶が正しければ確かお前は戦忍志望だった筈だが」
「入学してから気が変わったの」

いいから冷める前に飲みなさいよ、と仙蔵の前に出来立ての抹茶が入った茶碗を置くと彼はくるりとそれを回し中身を飲む。
…作法通りにやってるだけなのにやたらと絵になるなこいつ。これだから美形は得だよね…

「結構なお手前で。…作法委員長である私への頼みだったからな、てっきり礼儀作法を教わりたいのだとばかり思っていたぞ」
「私が教わりたいのは『女性らしい仕草』よ。言ったじゃない、仙蔵が女装した時の立ち振舞いが理想だって」
「ああ、そう言えばそうだな。…しかしそうするとこれを借りてきた意味は無かったと言う事か…折角長次に見立ててもらったのに」
「は?」

至極残念そうな表情と声音で言う物だから一体何を見立ててもらったのか気になって訊こうとしたら、そうするよりも早く仙蔵が自らの後ろから何かを取り出して私の眼前にポンと置いてみせた。
それは…

「…ちょっと、何よこれ」
「何って見れば分かるだろう、礼儀作法の教本だ」
「いやまあそうなんだけど…じゃなくて!これ一年生向けの挿し絵入って漢字も少ない滅茶苦茶基本の奴でしょ!!」
「言ったじゃないか、てっきり礼儀作法を教わりたいのだとばかり思っていたと。だから一から叩き込むつもりで一年向けの奴を図書室で借りてきてやったんじゃないか」
馬鹿にしてんのかぁぁぁぁぁ!!六年生にもなって一年向け借りてくるとか恥ずかしすぎるでしょこれ!!!!
「安心しろ。貸し出し票はお前の名前で記入しておいた」
「安心出来る要素を全く感じられない!!」

これ事情を知らない図書委員会の下級生が未返却の人確認すると私の名前発見して「四堂先輩六年生なのに一年向けの本借りてる…」って思われるパターンだよね?!

「違うの誤解なの私そこまで駄目な子じゃないよ雷蔵久作きり丸怪士丸ぅぅぅぅぅ!!!!」
「妄想が飛躍してるぞ暦。まあ落ち着いて茶でも飲め」
「誰のせいだと思っているのかな!あとそのお茶はたった今私が淹れた奴だ!!」

さも「自分が淹れました」と言わんばかりに差し出さないでよ。叫び疲れたからもらうけどさ…
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