戦国カレイドスコープ

□第5話
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ポッポー♪ポッポー♪

あー…朝か…

ポッポの囀(さえず)りに意識が覚醒し、重い瞼をこじ開けると無駄に整いまくっている幸村の寝顔が目の前にあった。
そっか…昨日はミナミの“ハイドロポンプ”でベッドがずぶ濡れになったから皆で雑魚寝したんだっけ…後でコウラン突っ込んで乾かさなきゃ…
まだ起ききってないぼんやりした頭でそんな事を考えていると不意に幸村の目が開いて視線が合う。
おお、私と違って寝起きの良いこった。

「幸村…おはよー…」
「…っ!はっ…はははは…」

あ…何か嫌な予感…

「破廉恥でござるぅぅぅ!!!」

とりあえず彼らと出会って丸一日経たない内に分かった事…
幸村は女の子に免疫が無さ過ぎる!そして声がデカい!!

「Be quiet!真田幸村ぁぁぁ!!」
「独眼竜の旦那、うちの旦那異国語分かんないから」
「黙れつったんだよ!朝っぱらから叫んでんじゃねぇ!!」

ボカッ!!





「うぅ…政宗殿、酷いでござる…」
『幸村お兄ちゃん大丈夫?ほら、痛いの痛いの飛んでけー!』

あの後男共を一回部屋から締め出し、着替えてから昨日一日着物だった彼らにこちらの洋服の着方を教えるだけ教え今度は私が部屋の外で待った。(流石に成人男性の着替えを平然と手伝える程私は神経太くない)
そして今はポケモンセンターの一角にある食堂で朝食中。
私の目の前では未だに頭の天辺を押さえ涙目の幸村にココアが近寄り、フカフカの前脚でたんこぶを撫でている。
うーん、良い子に育ってくれたわ。

「心愛ちゃんは優しいねー。でも旦那の自業自得だからそのままで良いよ?」
『はーいっ!』
「佐助?!」

さり気なく厳しいね佐助お母さん。
それにしても…皆、食が細い。やっぱりいきなり違う世界に来て不安なんだろうな。

「で?今日のScheduleはどうなってるんだ鏡華」
「昨日も言ったけどクチバシティって港町がこの町の隣にあるの。そこから一週間…七日間の内二日、ジョウト行きの船が出るからそれに乗るわ」

曜日が合わないと数日待つ羽目になるが、幸いにも今日は日曜…丁度出航日なのだ。

「時間はどれ位掛かる?」
「半日あれば余裕で。行き先のアサギシティは私の実家があるエンジュシティの隣町だからまず実家に寄って装備を整え直して…それから『ウバメの森』に向かいましょう」
「え、すぐに行けないの?」
「『ウバメの森』に到着するまでに野生のポケモンが出て来る場所が沢山あるから…それに『ウバメの森』自体も野生ポケモンの宝庫だからね」
「ふーん、そっか…」

まあ、草むらに入らなければ済む話なのだが必要なら入る事もあるだろうし『ウバメの森』は草むらの有り無しに関係なくいきなりポケモンが襲って来るから用心に越した事は無いだろう。

「休息も兼ねて実家に一泊する予定だから何事も無ければ明日には『ウバメの森』に着く筈だよ」
「明日か…早く着きたいぜ、奥州が気になって仕方ねぇ」
「某も甲斐のお館様が心配でござる…」
「気持ちは分かるけど…行ってすぐにセレビィに会えるとは限らないし焦らず気長に行きましょ?」

下手をすると何日、何ヶ月も待つ可能性がある…最悪、ずっと会えない可能性もある事は敢えて言わない。
少しでも彼らに希望を持ってこの世界で過ごして欲しいから。

「俺も鏡華と同意見だ。それにどうせならもっと色んなポケモンを見てみたいしな!」
「独眼竜の旦那は前向きだねぇ…ま、焦りが禁物なのは確かだけど」
「とりあえず今はご飯食べよう!食べなきゃ出発も出来ないよ」
「左様でござるな!」
「ああ」

先程までお皿に沢山あった料理はいつの間にか綺麗に無くなっていた。
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