ポップン単発夢

□裏家業式子育てのススメ
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突然鳴った電話の相手は自分と同じ、裏の世界で生きる腐れ縁だった。

「もしもし?」
「あ…KK…?アンタ今…表の仕事…何でも屋…だったよね?」
「そうだけどよ、どうしたいきなり」

なるべく平静を装うが、内心途切れ途切れの掠れた声に動揺しまくっている。
こんな弱りきった声、コイツが出すなんて。

「依頼料…払うから…ちょっと家に来て…アタシ一人じゃ…無…理…」

ツーツーツー…

「おい!どうした!!何があったんだよ!?…くそっ!」

悪態を吐きながら支度して奴の家に向かって走り出す。
律夏…無事でいろよ…!





全力で走った結果、家の前まで来たが一つ大事な事に気付いた。
…俺律夏の家の鍵持ってねーや。ま、呼び鈴鳴らせば良いか。

ピンポーン♪

しばらく待ってみる…が、いつもなら家にいればすぐ出て来るはずなのに反応は無い…こうなったら蹴破ったろかこのド「ドア蹴破ったら承知しないからね?」…ア?
足を上げて構えを取った瞬間、律夏が中から出て来た。
ただ普段と違うのは例え仕事が無い日だろうと髪もメイクも服装もばっちりキメている律夏がすっぴんで髪も服もボサボサのヨレヨレになっている事。

「何だ、いるなら返事しろよ。つか珍しいなお前がそんな格好するとか」
「化粧する暇なんて無かったわよ、今ようやく黙らせたんだから」
「黙らせたって誰をだ?強盗でも入ったのか??」
「ある意味強盗よりもタチ悪いわよ。実は…「ふぇぇぇえんっ!!」ああもうっ!ようやく寝てくれたと思ったのにっ!!」

何かを言い掛けるが廊下の奥から突然聞こえてきた泣き声に回れ右して奥の部屋に向かう律夏、その後を少し遅れて追い掛ける俺。
そして奥の部屋に入った先で俺が見た光景は…

ふぇぇぇえんっ!ふぇぇぇえんっ!!
「よしよし、良い子だから泣かないの!」

泣いている赤ん坊を必死であやす律夏の姿だった。
律夏…

「お前…いつ子供産んだんだ?」

ヒュッ!カッ!!

アンタ毎月一回は一緒に仕事してんだろーが?いつアタシの腹がデカくなったか言ってみろや!あ゛ぁ!?
「わ、悪ぃ!」

律夏の十八番・投げナイフが俺の顔左側スレスレで壁に突き刺さりました。

「で、実際どうしたんだよこの子供?」
「姉さんの子供なのよ。今日結婚記念日で旦那と出掛けたいから夕方まで預かってくれって」
「ふーん。じゃあこいつからして見たらお前っておばさ…」

ヒュツ!ヒュツ!カカッ!!

「あれぇ〜?何か今KKの口から独身女性に言っちゃいけない単語No.1が聞こえた気がするんだけどなぁ〜?」
何デモアリマセン

次は俺の顔右側と真上をナイフが通過しました。

「そんな訳だから夕方姉さんが迎えに来るまで一緒に子守りしてよ。さっき電話で言った通り依頼料も払うからさ」
「嫌「なんて言ったら今度は真下(心臓)にナイフよ?」喜んでお手伝いさせて頂きます!

こうして俺は不本意ながら律夏と一緒に子守りをする事になった。

「ちょっとこのミルク熱いじゃないの!口の中火傷したらどうするつもり?!」
「溶かせば良いんじゃないのか?」
「違うわボケェ!アンタの辞書に人肌って単語は無いの!?」
「おい、何か臭わないか?」
「え?…うわ漏らしてる!そっちにある換えのオムツ持って来て!!」
「はいよ」





そして夕方…すっかり疲れ果てた俺達に救いの手が差し伸べられた。

ピンポーン♪

「あ…多分姉さんだわ…」
「助かった…!」

ガチャン

「律夏〜!今日は本当にありがとう!迎えに来たわよ」
「どーいたしまして。楽しかった?」
「ええ、そりゃあもう♪…そちらの方は?」
「へ?ああ、仕事仲間。私一人じゃ面倒見きれなくて応援に来てもらったの」
「ふぅん…律夏の彼氏かぁ…」
「違う!何でそうなる「照れない照れない♪アンタも良い年なんだからそろそろ彼氏さんと落ち着いたら?子供って可愛いわよー。あ、これお土産のお菓子。彼氏さんと分けなさい?それじゃまた何かある時はよろしくー!」

バタン!

…二度と引き受けるかー!!

律夏の姉さんって…凄いマシンガントークだな。
口の悪さなら負け無しの律夏が扉閉まってようやく反論するなんて。

「KKもKKよ!何で違うって言わなかったの?お陰で姉さん誤解したまま帰ったじゃない!」
「お前が口挟めないトークに俺が乱入出来る訳無いだろ。それに…誤解されたままでも悪くないかなーなんてな?」
「はぁ?」
「だってお前の事好きだし。だからさ、このまま俺と付き合わないか?」
「…か…」
「?」
馬鹿っ!最低っ!ムード無いっ!!髪グシャグシャだしスッピンだし…もうちょっとマシな時に言いなさいよねっ!!」
「じゃあマシな時なら言って良いって事か?」
「…っ!勝手にすれば!?」

「ムード無い」に「勝手にすれば」…か。
それって期待しても良いんだろうな?
耳まで真っ赤な律夏に「依頼料は今度渡すからとりあえず今日は帰って!」と追い立てられながらも次に会う時やけにお洒落をしているであろうコイツにどうやってお望みのムード有る告白をしてやろうかと俺は頭の中で計画を練り始めるのだった。







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