雨夜ノ星

□自分にとってたいしたことがなくても、本人にとっちゃたいしたこと。
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スーを見付けたのは、神威がまだ団長になって間もない頃だった。
仕事で他の海賊集団との取引がある日。わざわざ地球なんて遠い星に来たのは、顔合わせの為である。
さっそく相手が滞在中の港に来て停泊中の船に乗るが、少し待っていろとのこと。
どうやら金品の他に、若い娘をさらってきたらしい。二人はその様子を一つ上の階から見下ろす。


「やけに賑やかだね。」


「ああ、強奪品のお披露目会ってところだな。」


「つまんないや。あーあ、鳳仙の旦那も、団長だか何だか知らないけど。
こんなめんどくさいこと、押し付けるなんて酷いよね。」


「そう言うな。あの組織じゃ権力が物を言う。
周りにとやかく言われたくなきゃ、甘んじて押し付けられとけ。」


「はいはい。さっさと終わらせて帰…あり?」


「どうかしたか?」


連れられた娘の中に、手負いの娘が一人いた。
オレンジ色の着物を着たその娘は抵抗したのか、顔に痣を作っている。


「あの娘、抵抗したのかな?」


「かもな。」


痣の他に両腕を白い包帯で巻いたその娘は、縄で縛られた状態だった。
しかも他の娘達が恐怖で泣き出す中、帰して欲しいと頭を下げて懇願している。
しかし、それでわかったと頷いてくれる相手ではない。


「残念ながら、そうはいかねぇな。お前らはもう商品なんだよ。」


「っ…。」


「まあ幸い嬢ちゃんは多少傷物だが、もとはいい。大人しくしてりゃ、いい買手がつく。」


娘が下げた頭を上げさせるように髪を掴む男。
痛さに顔を歪めてもなお、他の娘と違って諦めの色を見せない瞳に神威はわずかに興味がわくのを感じた。


「まあ売れ残らないように、媚びの売り方でも練習しな。
なんなら、相手になってやってもいいぜ。」


「ガハハッお前ロリコンか!?」


騒ぎ立てる汚い野次に、その娘の声色は低くなる。


「…が。」


「あ?」


「下衆野郎っつったんだよ…!汚い手で触るな!」



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