雨夜ノ星
□大人しい奴がキレると怖いのはギャップがありすぎるか、溜め込んでいるか。おそらく両方。
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太陽が沈んだ宵闇。潮風が吹く甲板で、二人は出会った。
一人は楽しそうな笑顔を浮かべて、手を差し出し。
一人は戸惑うように、その手を見つめる。
「なん、ですか?」
「何って、ついて来てくれるならこれから互いに世話になるんだし。握手するのは礼儀だろう?」
この手を掴め。そう言わんばかりに、少年は笑みを深める。
「きっと、長い付き合いになるよ。」
その言葉はまるで、そうなると宣言するようだった。
それが現実のものになることを、知っているかのように。
戸惑う黒髪の少女は、少年が差し出すその手を掴んだ。縋るように涙を浮かべて。
そして少年の言葉通り、少年が青年になっても少女だった女は傍にいた。
青年は、変わらない笑顔を浮かべ。
女は荒れ狂う海の前兆のような、穏やかな微笑みを浮かべて。