雨夜ノ星

□救命訓練はしっかり受けておこう。
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「君は馬鹿だよ。」


神威は今、ベッドの上で絶えず苦しげな呼吸をするスーを見ている。
あの後敵艦から本艦に戻る間、神威は阿伏兎から隠されていた事を聞いたのだ。


「前にスーから内密に聞かされてな…。本来なら団長に知らせるべきだが、スー本人がそれを拒んだんだ。」


「拒んだ?」


「玖珠呪族が毒に耐性があるのは知ってるだろ?
それは、今までありとあらゆる毒を体内に入れていたからなんだ。
その代償か、玖珠呪族にはどんな治療薬も効かない。」


怪我をしても、自身の治癒力に頼るしかないのだ。
癒えることのない、あの両腕が何よりの証拠。
今回の場合、出血による体力と抵抗力低下で抑制していた毒薬が暴れ回っているのだ。


「ストレスで死んだなんて言われちゃいるが、玖珠呪族の死因のほとんどは自滅なんだよ。

血を戻したとしても、すぐに抵抗力が戻るまでに回復するのは難しいだろう。
それにその間、スーの体が持ちこたえられるか…。」


わからない。そう言った阿伏兎の言葉に、神威は何かを言う気にはなれなかった。

大怪我ができない体なんて知られたら、弱い相手に興味のない自分に役立たずと思われるかもしれない。

だから、スーは神威に話せなかったのだ。
そしてそれを知った阿伏兎は、スーを仕事に連れて行きたがらなかった。


「そういう大事な事はさ、俺に言うことでしょ…。」



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