雨夜ノ星
□ただの夢だって、馬鹿に出来やしない。
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ダシ巻き卵に味噌汁、焼き鮭にほうれん草のお浸しなどなど。二人がスーが作っていった朝食を食べていると、神威が頭を捻る。
「朝早く出ていくなんて、何処に行ったんだろうね?」
「まあ、思い当たる場所が無いわけでもないがな。」
「ん?」
「出ていく前に、アイツが持っていた地球観光の雑誌。」
神威が箸をくわえたまま、阿伏兎から雑誌を受け取る。その雑誌をパラパラとめくれば、目につくページの端が折られた特集記事。
「アッハッハッわかりやすいね。」
「だな。」
「行動がこうもわかりやすいなんて、可愛いね。」
二人が覗き込むページに載っていた記事には、地球のスイーツ人気店について書かれていた。
【スイーツ部門第一位!一日限定三十個のザッハトルテが売りのケーキ専門店『愛LOVE景気』。】
「…つかおかしくない?愛にLOVEって、名前つけた奴の馬鹿さ加減がよくわかるんだけど。意味が重複してるし。
ケーキを愛してるんだか、景気回復を願ってるんだか。わかんないよ。」
「Iと愛とか、店が繁盛しますようにってかけてんだろ?」
「限りなくくだらないよ。大体、名前見ただけじゃ何の店かわかんないし。」
「そう言ってやるなよ。頑張って考えたんだよ、きっと。」
「興味ないよ。さてっと、ご飯も食べたし。スーを迎えに行ってくるよ。」
「はいはい。面倒事起こさんようにな」
朝食を平らげて箸を置いた神威が腰を上がると、阿伏兎は新聞を見ながら軽く手を振る。
ダイニングから廊下へ出る扉のドアを握った所で、神威は思い出したように振り返った。
「あーそうそう。」
「あ?」
「そうやってご飯食べながら新聞読んでると、さらにおっさんっぽいよ。じゃ。」
「やかましいわっこのすっとこどっこい!」