雨夜ノ星
□人には、見合ったポジションがある。
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「よしっ調理完了!」
絶えず動き回り、調理をしていたスーは流し台をきちんと片付けて手袋とエプロンを外した。
「うわーおいしそーっ。」
テーブルに並ぶ何人前かわからない大量の料理。和洋中、栄養バランス抜群なメニューに神威は目を輝かせた。
一方のスーは、姿の見えない阿伏兎に首を傾げる。
「阿伏兎さん、まだお仕事片付かないんですかね?呼んで来ます。」
「んー。」
早速炊きたてご飯を掻っ込む神威をダイニングに残し、スーは阿伏兎の部屋へと向かった。
よく飲まず食わずで研究に没頭する自分に、阿伏兎は食事の用意や部屋の片付けをしてくれる。
いつもとは逆の立場だと、小さく笑って扉をノックした。
「阿伏兎さーん?いますかー?」
扉をノックしても返事はない。不審に思ったスーは開いた扉から中を覗く。
机に突っ伏す姿を見つけたスーは、歩み寄って肩を揺すった。
「阿伏兎さん、ご飯にしましょ?阿伏兎さんったら…聞いてます?」
神威が全部食べてしまうと、冗談で脅しながらさらに強く肩を揺する。すると、阿伏兎の体はグラリと傾いて床に転がり落ちた。
「……え?あれ、あの…っ!?」
椅子からずり落ちて、そのまま床に倒れた阿伏兎はピクリとも動かない。焦ったスーは阿伏兎の頬を叩くが、それでも反応はなかった。
「も、もうっ阿伏兎さんったら!どれだけ爆睡してるんですか?寝るならご飯食べて、ベッドで寝ましょうよ。」
「…………。」
「阿伏兎さんだって、いつも私に言ってるじゃないですか。ね!」
「…………。」
「…あの、ひょっとして。どこか具合が悪い…とか?そんなわけないですよねっ。
まさか阿伏兎さんが体調不良なんて、ありえな…」
先程からの一方通行な会話に、スーはようやく事態を把握する。白目を剥いた阿伏兎の目に、顔を青くして頭を抱えたスーが反射した。
「ぁ阿伏兎さぁあああんンン!!?」