太陽と月の土壇場
□早起きは三文の徳って本当?
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女中の朝は早い―…。
雪の降る早朝。翡翠はまだ冷え込む台所で、味噌汁の為に煮干しの頭とはらわたを取り除いて出汁を取っていた。
翡翠は朝食の下準備は勿論、出勤して来る他の女中が来るまで調理を進めていたのである。
「昨日はじゃがいもと玉ねぎでしたから、今日はお豆腐とネギにしましょうか。
あとは梅肉と大根の葉の混ぜご飯に―…あ、おむすびにした方が食べやすいですよね。それから…。」
「翡翠ちゅわぁーんっおっはよ!」
「っおはようございます!?ぉおお蘭さん、今は包丁を扱っているので危ないですよ…!?」
後ろから勢い良く抱き着いてきたお蘭は、ハラハラしながらも挨拶する翡翠に笑う。
「ぷははっ条件反射だねぇ。驚いていても、しっかり挨拶するんだから面白ーい。」
「お、面白いですか?」
「うん。ねっ今日の朝ごはん何?それ、大根の葉?」
「はい。昨日のおでんに使った大根のものなんですが、捨てるのは勿体ないので取っておいたんです。
大根、かぶ、セロリなどの葉は栄養が豊富なので捨てずに利用したほうがよろしいですよ。」
「翡翠ちゃんて…。」
「はい?」
「お母さんみたい…っおっかぁ〜ミートボール食べたーい!サッカーボールくらいのっ!」
「あらあら…朝から胃に重いですよ?」
お蘭が翡翠の腰に抱き着いていると、ゆらりと背後に影が忍び寄った。