雨夜ノ星
□TPOって大事って言われるけど、要は空気を読めってことだよね。
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「人生って、思い通りにいかないね。」
スーお手製の朝食を頬張る神威がそう言うと、阿伏兎は思わず箸を止める。
ちなみにスーは先に食事を終え、薬圃(薬草を栽培する畑)に行ったので此処にはいない。
「いきなりどうしたんだ?ガラじゃねーこと言って。」
「だってさースーが…………ありゃりゃ、頭こんがらがってわかんないや。」
「はあ?まあ、思う事を言ってみろよ。」
「スーをどこかに閉じ込めたい。」
「…それは、そういうサディスティックなプレイとしてか?」
「阿伏兎って、俺をそういうふうに見てるんだね。殺しちゃうぞ。」
「じゃあ何だよ?」
「俺さ、独占欲?ってのが意外と強いみたいなんだ。」
「ははあ…あ―何そういうこと?マジかよ。」
まさかとは思っていたが傍若無人、超自分主義な上司が部下にホの字だとは…自分で言って驚いてしまった。
強さにしか興味がない上司が、一体どうしてしまったのか。
「もうずっと一緒に寝てるのにさ。意識されてない感じなんだよね。」
「手ェ出してなかったのか。」
「そりゃ、何度か出そうと思ったけどさ。なーんか気が引けるんだよね。」
「ほうほう。」
上司の恋愛相談に興味などない阿伏兎が、適当に相槌をうちながら魚の骨を取り除いていると、魚の目玉部分に箸が突き刺さる。
「人が相談してるんだからさ、ちゃんと聞いてよ。
この魚みたいになりたいの?」
「へいへい…。」
(さすがに独眼になりたくはねぇな。…あれ?でもこの魚、貫通して両目いかれてるんだけど。
もしかして、両目潰すつもり?)
阿伏兎は仕方なく箸を置いた。とりあえず飯にありつくには、この上司の相談に乗らなければならないようだ。
「で、続きは何ですか。」
「とにかく何とかしてよ。」
「団長、それもう相談じゃないからね。」