雨夜ノ星
□TPOって大事って言われるけど、要は空気を読めってことだよね。
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「とんだ鈍感さだな…。どういうふうに聞いたんだよ?」
「薬圃に行ったらさ、スーがいつもみたいに薬草の水やりをしてたんだ。」
阿伏兎の提案に従って艦内にある薬圃に到着すると、スーは薬草や毒草の世話をしていた。
その表情はとても楽しそうで、つい声をかけるのを忘れて見つめてしまう。
しばらく見ているうちに、用事を思い出した神威はスーの傍まで近付いた。
「スー、ちょっといい?」
「あ、神威さん。ちょうど良かった。今日のおやつは何にします?」
「おやつ?それなら、この前作ってくれたアレがいいな。
林檎が入った、ゼリーみたいなの。」
「林檎の寒天ですね。わかりました。
あ、すみません。つい遮ってしまって…何の御用でした?」
「ああ、そうそう。スーってどんなのが好みなのかなって?」
「私は、牛乳プリンが好きです。」
そう笑顔で答えたスーと一旦別れ、阿伏兎に報告しに来たのだという。
話を聞き終えた阿伏兎は、突き出した指を神威に向けた。
「主語を入れろ!そりゃ、牛乳プリンって答えてもおかしくないわ!!」
「えー?」
「TPOだよ!場所はともかくっ時と場合を考えろよ!
空気読めよォオオ!まさかその話の流れで、男の好み聞かれるなんて思わねぇだろうが!」
「そーか、案外難しいんだね。じゃあ、もう一回聞いて来よう。
今度は阿伏兎もついてきてよ。」
「女子高生かっつの。やなこった、俺に関係ねぇし。
自分で何とかす…」
「断ったら殺す。…って言ったら、阿伏兎にも大いに関係あると思わない?」
「…行かせていただきますよ、チクショー。」
「まあ阿伏兎は、空気を読んで補正してくれたらいいから。」
「俺はツッコミ要員か。」
「そうそう、そんな感じ。」
「やかましいわっこのすっとこどっこい!」