雨夜ノ星
□TPOって大事って言われるけど、要は空気を読めってことだよね。
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再び薬圃へ移動した神威と阿伏兎。一見、見渡せばスーの姿はない。
おそらくしゃがんで作業をしているために、体が生い茂った薬草に隠れているのだろう。
「スー!」
「はーい!」
神威が声を掛ければ、スーはしゃがんだ体を立たせた。
ひょっこりと顔を出したスーは、続けて声をかける。
しかし、その二人の距離は目測で20m程あったのだ。
「どうしましたぁあー!?」
「あのねー!さっきの続きなんだけどぉおー!」
「お前ら馬鹿か!近付けよもっと!?いや確かに広いけどね!?効率悪いから!
農園のやり取りしに来たんじゃねぇだろうがよ!」
(イライラするんですけど!無理矢理同行させられたのもあるが、こりゃもっと根本的な問題だぞ。)
早速阿伏兎の空気を読んだ補正により、効率の悪さに気付いたスーが薬草の入った籠を抱えてやって来た。
「何でしょうか?」
「スーの好みってどんなの?」
「だから主語入れろっつーの!言葉の前後が、変わっただけじゃねぇか!
ああー…あれだ、男の好みってことだから。」
「阿伏兎さんってば、まるで通訳ですね。」
「まあ、そんなもんだ。で?どうなんだ?」
「相手によりますね。」
「あーなるほど。性格とかか?」
「そうですね。やっぱり…ものっすごく嫌な奴なら、苦しんで死んでほしいですね。
なので毒薬を作るにしても、配合とか調節します。」
「オイィイイ!そういう好みを聞いてんじゃねェエよォオオ!!」
「へぇー、組み合わせで色々あるんだね。」
「面白いですよね。例えば、これとこれを組み合わせて…」
「そんなおっかねぇ事柄の話に、花咲かせてんじゃねぇよ!このWKYが!!
いい加減にしろよ!?この場所が駄目なのか!?
場所はともかく、時と場合を考えたけど場所から!?」