雨夜ノ星
□ただの夢だって、馬鹿に出来やしない。
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一方手錠をかけられたスーは、街中で正体をバラすわけにもいかず。真選組屯所で取調べを受けていた。
現在向かい合って座った土方が、テーブルの上の押収した麻薬に探知器を向けている。探知器は麻薬に反応して音を発していた。
しかしスーに向けた時のような、けたたましいものではない。
「ほら、こんなかわいらしい小鳥のような音が…」
そう言葉を切って、押収した麻薬から探知器のアンテナをスーに向ければ、明らかに音が違う。もはや探知というより警戒のレベルだ。
「んだよこの七面鳥が首締め上げられたような音は!針が振り切れてぶっ壊れてんだぞっ。
これで三台目だ、一台いくらすっと思ってやがる!!」
そう殉職した探知器をテーブルに叩きつければ、スーも負けじと睨み返した。
「知りませんよ!貴方が勝手にやってんでしょうがっ!大体っ散々ボディチェックだのレントゲン撮ったでしょう!?
放射線で殺すつもりですか!?セクハラで訴えっぞ!」
「ボディチェックしたのは女だろうが!!」
確かにボディチェックをしても、不審な物はなかった。もしや飲み込んでいるのかと、レントゲンを撮っても胃にも何もない。
「いい加減に帰してくださいよ…。」
(レントゲンで撮ったって、見つかるわけないし。)
「まだだ!」
何かあるはずだと、自分の勘を信じて身元を確認すべく口を開こうとした時。取調室に出前でとったカツ丼が運ばれた。
しかし、目の前に差し出された蓋を開けたスーは首を傾げる。
「これ…なんですか?」
「何って…見りゃわかるだろ、カツ丼だカツ丼。」
「かつどん。なるほど、トンカツを卵でとじたんですね。」
「珍しいか?なら、さらに美味くしてやる。」
土方は懐から出したマヨネーズの蓋を開けた。ニュルニュルと、惜し気もなくカツ丼にとぐろを巻くようにかけられるマヨネーズは、あっという間にカツが見えなくする。
その土方の奇行に、スーは引き攣った表情を向けた。
「…なに、してるんですか?精神的拷問ですか?」
「土方スペシャルだ。これ食って洗いざらい吐きやがれ。」
「ならせめて、洗面器かバケツを用意していただかないと…。」
「誰が胃の内容物を吐けっつった!!美味いもん食って事情を話しやがれ!」