雨夜ノ星
□ただの夢だって、馬鹿に出来やしない。
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遊ぶ場所は自分で探さなければならないほど、田舎の村。そこに年の近い子供はいても、自分と一緒に遊んでくれる子供はいなかった。ただ一人の少女を除いて。
"君はいつも、何をお絵かきしてるの?"
"…テメェこそ、いつも草なんかむしって何してんだよ。"
"薬を作ってるんだよ。"
村で噂になっていた。幼い子供ながら、腕のいい薬師がいると。両腕に包帯をした少女は暢気に笑い、薬の独特的な匂いが鼻を掠める。
けれど、自分にとってはそれは嫌な匂いではなかった。
「ふあぁ…。」
欠伸をする総悟が廊下を歩いていると、庭先でミントンのラケットで素振りをしていた山崎が目撃した。
「あ、沖田隊長。またどこかで昼寝してましたね?副長にどやされますよ。」
「うるせー。夢見が悪くて、よく眠れなかったんでィ。」
「はぁ…。今副長が隊長の代わりに事情聴取してるってのに、暢気な人だ。」
「はっざまーみろィ。」
「いや、ざまーみろの使い方間違ってますから。あんたが自分の様を見直してください。
薬物所持容疑で連行された女の子、今頃副長に怯えてるんじゃないかなぁ。」
「へぇー朗報だねィ。よし、山崎。土方を婦女監禁でブタ箱にぶち込みなァ。」
「話聞いてました!?事情聴取だっつってんだろ!…と、まあ冗談はここまでにして。
あの女の子、なんか訳ありっぽいんですよね。」
「あン?訳あり?」
「ボディチェックした婦人警官から聞いて、ちょっと覗いて来たんですけど。両腕に包帯巻いてるんですよ…何だか酷い火傷があるみたいで。
それも指から肘にかけての広範囲。あんな可愛い女の子には不自然ですよ。DVだったりしたら許せないですよね!嫁入り前、かはわかんないけどっあれは異常です!」
そうまくし立てるように言った山崎に、普段は適当に聞き逃す総悟だが気になるワードに表情を変える。
「両腕に…包帯?…名前は?」
「いや、俺は知らないですけど…でも黒髪の結構可愛い娘さんでしたよ。って言っても、沖田隊長には興味ないで―…。」
「どこの取調室でィ!」
「ぇえ!?えっと二号室ですけど…っなんだァ一体?」
急に走り出した総悟に首を傾げるものの、珍しい光景山崎は再び素振りを再開した。