雨夜ノ星

□人には、見合ったポジションがある。
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スーが泣き止んでしばらくした頃、神威が帰ってきた。持って来たそれを笑顔で阿伏兎に差し出す。


「はい、どーぞ。俺って部下思いな上司だよね。」


「…団長。これ、何か聞いてもいいか?」


「冷えたピータンだけど?」


「無理矢理ぼけてんじゃねーよ!」


「冷えピッタンですよ!」


「ヒエピッタン?冷えたピータンって聞こえたんだけど。そもそも何それ?食べ物?」


風邪、知恵熱、誰もが一度はお世話になっているだろう冷えピッタンを知らない?
いたって不思議そうに聞いて来た神威に、二人は少ししてから納得がいった。


((この人には無縁の物だった…!))


「どーでもいいけど、ほら早く食べなよ。阿伏兎には早く元気になってもらわないと。」


「団長…。」


「色々不便だし。」


「…だろうと思ったよ。俺はお前さんの尻拭いをする、便利なおじさんだからな…。」


「阿伏兎さんっ気をしっかり!神威さんは、阿伏兎さんがいないと困るって言ってるんですよ!
か…神威さん?それは後で食べられますから。今は置いておきましょうね。」


「ふーん?」


「そろそろお昼ご飯ですよ!阿伏兎さんはどうしますか?」


「あー…粥かなんか頼むわ。」


「俺もお粥がいい。」


「え?神威さんもですか?すぐにお腹空いちゃいますよ?」


「阿伏兎ばっか構ってもらって、狡いんだもん。」


(狡い?)

「わかりましたよ。何粥がいいですか?」


「そうだなぁ。卵粥と梅粥と、唐揚げとエビフライとー…。」


神威の注文を常備したメモ帳にメモし終わると、スーは阿伏兎に向き直る。


「阿伏兎さんは何かご要望はありますか?身体の具合とか。」


「最近せっかくの休憩中でも、寝付けなくてな。心配事が多いせいかね。」


「では神経が休まるように、調合した薬膳を用意します。食べてゆっくりお休みになってくださいね。お仕事も私で手伝えるなら遠慮なく…。」


「やっぱり狡い!」


「「ぇえ―…?」」


「凄い心配してもらってるんだもん!」


「あのなー仕事で疲れてんの。マジ倒れたからね、おじさんは。」


「じゃあ俺も仕事する!」


「マジかァアァア!!よっしゃ気持ち良く眠れる!」


(阿伏兎さんの嬉しそうな顔、初めて見た…!)



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