雨夜ノ星
□人には、見合ったポジションがある。
4ページ/6ページ
スーが泣き止んでしばらくした頃、神威が帰ってきた。持って来たそれを笑顔で阿伏兎に差し出す。
「はい、どーぞ。俺って部下思いな上司だよね。」
「…団長。これ、何か聞いてもいいか?」
「冷えたピータンだけど?」
「無理矢理ぼけてんじゃねーよ!」
「冷えピッタンですよ!」
「ヒエピッタン?冷えたピータンって聞こえたんだけど。そもそも何それ?食べ物?」
風邪、知恵熱、誰もが一度はお世話になっているだろう冷えピッタンを知らない?
いたって不思議そうに聞いて来た神威に、二人は少ししてから納得がいった。
((この人には無縁の物だった…!))
「どーでもいいけど、ほら早く食べなよ。阿伏兎には早く元気になってもらわないと。」
「団長…。」
「色々不便だし。」
「…だろうと思ったよ。俺はお前さんの尻拭いをする、便利なおじさんだからな…。」
「阿伏兎さんっ気をしっかり!神威さんは、阿伏兎さんがいないと困るって言ってるんですよ!
か…神威さん?それは後で食べられますから。今は置いておきましょうね。」
「ふーん?」
「そろそろお昼ご飯ですよ!阿伏兎さんはどうしますか?」
「あー…粥かなんか頼むわ。」
「俺もお粥がいい。」
「え?神威さんもですか?すぐにお腹空いちゃいますよ?」
「阿伏兎ばっか構ってもらって、狡いんだもん。」
(狡い?)
「わかりましたよ。何粥がいいですか?」
「そうだなぁ。卵粥と梅粥と、唐揚げとエビフライとー…。」
神威の注文を常備したメモ帳にメモし終わると、スーは阿伏兎に向き直る。
「阿伏兎さんは何かご要望はありますか?身体の具合とか。」
「最近せっかくの休憩中でも、寝付けなくてな。心配事が多いせいかね。」
「では神経が休まるように、調合した薬膳を用意します。食べてゆっくりお休みになってくださいね。お仕事も私で手伝えるなら遠慮なく…。」
「やっぱり狡い!」
「「ぇえ―…?」」
「凄い心配してもらってるんだもん!」
「あのなー仕事で疲れてんの。マジ倒れたからね、おじさんは。」
「じゃあ俺も仕事する!」
「マジかァアァア!!よっしゃ気持ち良く眠れる!」
(阿伏兎さんの嬉しそうな顔、初めて見た…!)