雨夜ノ星
□人には、見合ったポジションがある。
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久しぶりに爆睡して、阿伏兎はだいぶ体が楽になったようだ。トイレがてら神威の様子を見に行く途中、耳にした団員達の話に足を早めて部屋の扉をノックする。
出て来たスーは、阿伏兎の顔を見て苦笑いをした。
「…団長がぶっ倒れたって?」
「見事な知恵熱です…。」
「スー…頭痛ー…い。割れるぅうーパーンてなるよぉお…っ。」
ベッドに横になった神威は額に冷えピッタンを貼り、うんうんと唸っている。
神威も冷えピッタンにお世話になる時がきたらしい。
頭痛をどうにかしてほしいと訴えるように、傍らにやってきたスーの服の裾をぐいぐいと引っ張っている。
「ゆっくり眠ってください。休まればすぐ治りますから。」
「ゔー頭痛くて眠れないよ。」
「では、痛み止めを持ってきますね。少し楽になりますから。」
「いーやーだー。行っちゃ駄目…っ。」
「…阿伏兎さん。申し訳ないですが、部屋から薬を持って来てもらえますか?
一番手前の棚にある、水色の蓋の瓶なんですけど。痛み止めってラベルが貼ってあります。」
「へいへい。お安い御用ですよ。」
阿伏兎は溜め息を吐いて、机の上に広がる書類を束ねる。中途半端に終わっている書類もあるが、終わっているものに関してはちゃんと処理出来ているようだ。
頭が悪いわけではないのだから、普段から真面目にやっていれば知恵熱も起こさないだろうに。
勿体なく思いながらも、今更かと既に諦めはついている。阿伏兎はスーに向き直った。
「スー…。俺のことはいいから、団長に構ってあげなさい。」
「お母さんンン!?」
やれやれと薬を取りに行った阿伏兎に扉の前まで見送ると、体に重みを感じる。
ベッドから出た神威が、スーの背中にのしかかったのだ。
「神威さん、寝なきゃ駄目ですよ。」
「………。」
聞こえているはずなのに返事がない。それが何故かを察したスーは言い直す。
「…神威、寝なきゃ駄目。」
「寝てる間に…どこかに行ったりしない?」
「行かない。」