雨夜ノ星
□一旦認めたら、後は流れるように理解できるものだったりする。
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仕事のため本艦を離れていた神威と阿伏兎は、帰還すると報告書を書いた。実際には阿伏兎が書いているのだが、それはもう暗黙の了解となっている。
報告書を書き上げ、報告を済ませた阿伏兎は思い出したように口を開いた。
「最近、アイツ見ないな。」
「アイツって?」
「スーシュアルダだよ。お前さんが傍に置くって言ったんだろうが。せめて所在くらい把握しとけよ。」
「あーそういえば、俺も見てないなぁ。あの娘がいるとしたら部屋か薬圃だろうけど、特に用もなかったから。仕事に行くって言ってから、まだ会ってないや。
声をかけた時も本を読んでたし、部屋にいるんじゃない?」
「…まずくね?アイツ休憩取るの下手だったろ。」
「えー?ご飯は下っ端が運んでるだろう?」
仕方なく阿伏兎と神威が様子を見に行けば、部屋の前に食事が置かれている。そのメニューに阿伏兎は眉を寄せた。
「おいおい…仕事に行く前も、酢豚じゃなかったか?」
「ご飯カチコチだね。」
「おいィイイイ!!軽く5日飯食ってねぇぞアイツ!!」
またかァア!!と叫んだ阿伏兎が部屋を開ければ、スーは黙々と本を読んでいた。
集中したい時は椅子にきちんと座るよりも、壁に持たれて曲げた膝を所見台がわりに読む方がいいらしい。
大きな音を立てて開いた扉に気付いたスーは、本の文面から顔を上げる。
「あれ…?神威様に阿伏兎さん。お仕事はどうしたんですか?」
「もう帰ってきたよ。ちなみに昨日ね。」
「あれれ、今2時間くらいしか経ってないんですけど。」
「その時計止まってるよ。」
「あ、本当だ。今何時ですか?」
「昼の2時だ。つうか、俺達が仕事に出てから5日経ってんだよ。」
「ははは、そんな馬鹿な…。」
周りに積み上げていた本を片付けようと、立ち上がろうとしたスーはそのまま前につんのめる。
「大丈夫か!?」
「体に力が入りません。そういえばお腹が空いていました。」
「当たり前だ、すっとこどっこい!」
阿伏兎は呆れながらもスーの両脇に手を入れ、起き上がらせると再び壁にもたれかけさせる。そして新しい食事を持って来ると出て行った。