紅の死神

□土翁と空夜のアリア
25ページ/25ページ



「なら私も言わせて貰う。お前が感情で動かなければ、AKUMAの罠にかかることもなかった。
ユウが怪我する事もなかったんだよ!っユウにもしもの事があったなら、私はお前を絶対に許さなかった…!!」


「……。」


「守りたいなんて口じゃ簡単に言えてもな!守る事は破壊するよりも難しいんだ!
守りたいなら、守れるだけの強さを持て!!

でなきゃ…お前の優しさはいつか仲間を殺す。」


蓮華が手を離して背を向けた時、神田が石段を登ってきた。


「何やってんだ。しっかり見張ってろ。」


ドサリと石段に腰掛けた神田は、コムイからの連絡を淡々と伝える。


「コムイからの伝達だ。俺とレンはこのまま次の任務に行く。
お前は本部にイノセンスを届けろ。」


「…わかりました。」


覇気のないアレンは、ずっとララの歌を聞き続けていた。まるでもう聞こえないグゾルの代わりに、聞いているかのように。
神田は再び膝に顔を埋めるアレンを一目見ると、視線を前に戻した。


「…辛いなら人形止めてこい。あれはもう、ララじゃないんだろ。」


「二人の約束なんですよ。人形を壊すのは、グゾルさんじゃないとダメなんです。」


「甘いなお前は。俺達は【破壊者】だ。【救済者】じゃないんだぜ。」


「…わかってますよ。でも僕は…」



強い風が過ぎると共に、ララの歌が止まった。

グゾルが死んで3日目の夜。人形は止まったのだ。

アレンが人形のもとに行くと、ララの声が蘇る。


「ありがとう。壊れるまで歌わせてくれて。

これで約束が守れたわ。」


穏やかな声で言ったララはアレン胸へ倒れ、何も発さなくなった。壊れた人形に、アレンと蓮華の瞳から涙が流れる。

神田の耳まで届かなかった声は、蓮華には聞こえたのだ。


(ララはまだ残っていた。グゾルとの約束を守るために…。)


「おい?どうした?」


様子の変化に気づいた神田に、アレンは涙を拭いながら言う。


「神田…蓮華…。

それでも僕は、誰かを救える破壊者になりたいです。」


それは一人の少年が改めて決心した思い。

マテールの空には、満天の星が輝いていた。


next
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ