紅の死神
□土翁と空夜のアリア
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「なら私も言わせて貰う。お前が感情で動かなければ、AKUMAの罠にかかることもなかった。
ユウが怪我する事もなかったんだよ!っユウにもしもの事があったなら、私はお前を絶対に許さなかった…!!」
「……。」
「守りたいなんて口じゃ簡単に言えてもな!守る事は破壊するよりも難しいんだ!
守りたいなら、守れるだけの強さを持て!!
でなきゃ…お前の優しさはいつか仲間を殺す。」
蓮華が手を離して背を向けた時、神田が石段を登ってきた。
「何やってんだ。しっかり見張ってろ。」
ドサリと石段に腰掛けた神田は、コムイからの連絡を淡々と伝える。
「コムイからの伝達だ。俺とレンはこのまま次の任務に行く。
お前は本部にイノセンスを届けろ。」
「…わかりました。」
覇気のないアレンは、ずっとララの歌を聞き続けていた。まるでもう聞こえないグゾルの代わりに、聞いているかのように。
神田は再び膝に顔を埋めるアレンを一目見ると、視線を前に戻した。
「…辛いなら人形止めてこい。あれはもう、ララじゃないんだろ。」
「二人の約束なんですよ。人形を壊すのは、グゾルさんじゃないとダメなんです。」
「甘いなお前は。俺達は【破壊者】だ。【救済者】じゃないんだぜ。」
「…わかってますよ。でも僕は…」
強い風が過ぎると共に、ララの歌が止まった。
グゾルが死んで3日目の夜。人形は止まったのだ。
アレンが人形のもとに行くと、ララの声が蘇る。
「ありがとう。壊れるまで歌わせてくれて。
これで約束が守れたわ。」
穏やかな声で言ったララはアレン胸へ倒れ、何も発さなくなった。壊れた人形に、アレンと蓮華の瞳から涙が流れる。
神田の耳まで届かなかった声は、蓮華には聞こえたのだ。
(ララはまだ残っていた。グゾルとの約束を守るために…。)
「おい?どうした?」
様子の変化に気づいた神田に、アレンは涙を拭いながら言う。
「神田…蓮華…。
それでも僕は、誰かを救える破壊者になりたいです。」
それは一人の少年が改めて決心した思い。
マテールの空には、満天の星が輝いていた。
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