紅の死神

□夢の終わり
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通信が切れると、神田は再び捜索を開始する。何一つ見つからない手掛かりに、大きく舌打ちをした。


「チッ…!」

(ある程度近くにいれば、ゴーレム同士が反応して居場所を知らせるんだが…全く反応がねぇ。
近くにいないか、壊れたかの二つを考えていたが…リナリーからの連絡によると後者だな。)

「連絡の取りようもないな…早く見つけねぇと。」


神田が川沿いを走り探す頃。ウィリアムの家を出発しようとしたアレン達の元に、あの時の少女がやって来た。


「君は…。」


「…紅いお姉ちゃん。死んじゃったの…?」


「死んでなんかいないよ。絶対に見つかる。」


安心させるように笑いかければ、少女は涙を零す。


「ごめん、なさい…っ!」


「え…?」


「本当はわか、ってたの…っママはもう帰ってこないんだって…!」


病に伏した母親は自らの死期を悟り、自分を枕元へ呼んだ。青白い顔で微笑む。
やせ細った手が、自分の髪を優しく撫でた。


"ママはもうすぐ遠くへ行っちゃうけど、パパがいるから大丈夫よね?

貴女は―…"


"お前は一人じゃない。"


"一人じゃない。"と微笑んだ瞳は母親と同じ優しく強い光を射していたのだ。
その瞳を見た途端、母親との約束を思い出す。"大丈夫。"だと約束し、精一杯笑ったことを。


「助けてくれて、ありがとうって伝えて。貴方にも、ありがとう。」


「どういたしまして。必ず伝えるよ。」


小さな少女が懸命に母親の死を受け入れようとする姿に、ウィリアムは胸を締め付けられる。


「村の皆も目が覚めた事でしょう…。私は今から墓標を元に戻すよう、職人に頼んできます。
そして墓参りをするつもりです。長い間ほったらかしでしたから、二人に怒られるかもしれませんね。

…本当に、お世話になりました。」


深々と頭を下げるウィリアムに、上げるよう施したアレンは墓の事を忘れずに頼んだ。


「村の皆さんにも、墓参りの事をお願いしますね。」


「勿論です。蓮華さんが無事に見つかるよう、祈っております。」


「ありがとうございます。」


「アレンさん、そろそろ行きましょう。始発が出る頃です。」


「始発…。もうすぐ夜が明けてしまうんですね。」

(日の光に弱い蓮華には、朝日はつらいだろう…。どうか、無事に見つかりますように。)


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