紅の死神
□神の使徒
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部屋から出た俺は複雑に絡み合い、こんがらがりそうな蓮華の事を頭の中で整理していた。
"だから黙っていてくれな?"
一番大事な奴に言えない蓮華もツライけど…
「何も言ってもらえないのも、ツライさ…。」
これは二人の事だから、俺が割って入るもんじゃない。でもあんまり見ていられないなら、言っちゃうかもなぁ…。
ふと立ち止まって、今までの記憶を思い返す。
今思えば、俺と蓮華は初めっから仲が良かった訳じゃなかった。
"お前のその嘘臭い笑い方が気にいらない。"
二年くらい前に俺に向けられた蓮華の目は、嫌悪に満ちていたのだ。
当時の俺は、愛想の良さですぐに誰とでも打ち解けていた。波風をたてないようにへらっとして、仲良くなって…。
俺のウソの笑顔を見抜いたのは、蓮華が初めてだった。
一番最初に蓮華を見たのは、教団内の廊下。
血まみれになって肩を押さえながら壁を支えにして、覚束ない足取りで歩いていたのを見た。
俺と同じ赤髪。
でもそれは鮮血に染まったような色で、あの白い肌と同じ瞳の色を合わせると正直ぞっとした。
「蓮華っ大丈夫!?」
一緒に食堂へ向かっていたリナリーが、いち早く駆け寄って体を支える。
目線を上げた蓮華と、視線が絡み合った。初めて見た俺に、不思議そうな表情になる。
「…?」
「あっ蓮華は初めてだったわね。彼はラビ。最近、入団したエクソシストよ。」
「初めましてさ。にしても、酷い怪我さな。医務室まで手伝うさ。」
にっこりと愛想良く笑って手を差し伸べると、その手は肩を押さえて血のついた手で勢いよく払われた。
「…触るな。」
「ちょっと蓮華っごめんね、ラビ。人見知りするタイプなの。」
「気にしてないさ。」
「一人で行ける…。」
「何言ってるの!そんなフラフラで!早く医務室に行きましょ。ラビ、先にご飯食べてて?」
「わかったさ。」
笑顔で接して拒否されたのは初めてだった。
(おかしいな…。なんか間違えたんか?)
それから何度仲良くなろうとしても、向けられる目は変わらず。時間だけが過ぎていく。