紅の死神
□それはまるでガラスのように
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闇は私を求め、光は私を嫌う。
この紅い髪と瞳はきっと、目印なのだ。
いつかこの汚れた体に、神が下す鉄槌のための。
【私】が生まれた時。涙なんて知らなかった―…
あの暗い部屋で毎日毎日観察されて過ごしていくうちに、アイリスの精神は限界にきていた。
日々頭の中に響く声。
激しい頭痛。
自分の中に、もうひとり別の誰かがいるという恐怖感。
逃れたくて、死にたくて。
尋常じゃない力を手に入れたアイリスにとって、部屋の扉を壊すのは簡単なこと。
しかし、どこへ逃げればいいのかわからないアイリスは森の中をさまよい続けた。
楽になりたい。
助けてほしい。
この苦しみから…。
そんなボロボロだったアイリスの目の前に、空から光る球体が降りてきた。
何の気なしに手を伸ばすと、その光は腕輪になってアイリスの手首を飾る。
その途端、体が燃えるような熱い感覚に戸惑った。すぐに消えた痛みに目を開けると、目の前を垂れる髪の色に驚愕する。
鮮血に染まったような、紅の色。
慌てて近くの川を覗くと、瞳も同じ色に変わっていた。
訳がわからない。
どうして私が。
追い討ちをかけるような出来事に、アイリスは絶望した。
こんな体に生んだ親に。
救ってくれない神に。
冷たい世界に。
高い崖へ辿り着いたアイリスは、迷うことなく―…その身体を空へ投げ出した。