紅の死神
□Nightmarish
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目を閉じた世界に、朧げに浮かぶ人影。伽羅色の瞳に碧眼の少女は幼い顔をしているが、自分だとわかる。
「お前は私…?」
同じ顔でも、髪も瞳の色も違う少女は悲しげな表情だった。
《私はアイリス…。》
「アイリス…?」
《ずるいよ…どうして逃げるの?あなたには、私が欲しくても手に入らなかったものがあるのに。》
「なんの…話だ?」
《仲間も、受け入れてくれる場所もあなたにはあるのに。
それをなかったことにして、逃げるなんてずるいよ。》
「なか、ま…?」
《…あなたが守りたかった大切なもの…失ってもいいの?》
視界に広がる記憶。それは、スライドショーのように流れては頭に染み込んでいった。
"夕焼け色だ。"
窓の向こうの景色と自分を見て、そう言った人。
"世界の為に頑張りましょう。一銭にもならないけどね。"
笑顔を浮かべ、自分に手を差し延べた人。
"命に差なんてありません。失してはいけない大切なものなんです。"
譲れないものを自分にぶつけた人。
"こちらこそ、よろしくさ。蓮華。"
嘘のない笑顔を向けた人。
"だって、大切な仲間だもの。"
揺るぎない優しさを与えてくれた人。
「大切な…もの…」