紅の死神

□悪魔誕生
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目の前には、殺風景な病室。また夢を見ているのかと、神田はぼんやり眺める。

ベッドの上に座る少女には、見覚えがあった。


(レン…?いや、違う…アイリスだ。)


顔色は悪いが、外を眺める瞳は憧れに満ちている。アイリスは布団を剥いで足を床につけるが、力が入らないのか前へ倒れ込んだ。
それに気づいた看護婦は、仕方ないといった様子でやってくる。


「っもう…また勝手に…。」


「外に行かせて…。」


「駄目よ。肺も弱いんだから、外には出られないって言ったでしょ。窓も閉めて。
此処は車がよく通るから、空気も綺麗じゃないのよ。」


「少しだけでいいから。」


「っ駄目って言ってるでしょ!全く…っ患者が相次いで忙しいってのに、余計な世話をかけさせないでもらいたいわ!」


「…ごめんなさい。」


看護婦はアイリスをベッドに戻すと、窓に鍵をかけてカーテンも閉めてしまった。


「大人しく、ベッドで寝ていてちょうだい。そんな体じゃ、何にも出来やしないんだから。」


そう吐き捨てた看護婦は、荒々しく病室の扉を閉める。そのやりとりを見ていた別の看護婦が、咎めるような目をしていた。


「ちょっと、何患者に当たってるの。可哀想じゃない。カーテンまで閉めるなんて。」


「別にいいじゃない。外が見えるから、出たがるのよ。」


「疲れてるのはわかるけど、あんまりだわ。」



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