太陽と月の土壇場
□拾ったきみ
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総悟が屯所に戻った時、玄関で近藤とばったり出くわす。雨に濡れた隊服の上着を脱いでいるところを見ると、近藤も傘を持っていなかったらしい。
「お、総悟も帰ったか。急に降り出しやがって、とんだ災難だったなぁ。」
「全くでさァ。天気予報じゃ、十中八九降らないっつってたのに。」
「いや、十中八九降らないとも限らないかもしれないって言ってたぞ。」
「そうでしたっけ?最後まで聞いてやせんでした。」
「…ところで総悟。ちょっと、聞きたいことがあるんだが。」
「何です?改まって。」
雨の中ご苦労様と言わんばかりに、穏やかに向けられた笑顔は総悟が肩に担いでいるものに固まっていた。
「その肩に担いでるの、何?」
「さっきそこの路地で拾いやした。」
「やっぱ人だよね!?あんまりナチュラルだからびっくりしたんだけど!猫拾ったみたく言ってどうすんの!?」
「あらら、てっきり気付いてんのかと思ってやした。行き倒れてたんで、とりあえず保護したんですよ。」
担がれた少女を総悟から受け取った近藤は、衰弱しきっている様子に焦りを見せる。
「早くあっためてあげないと…っうわ!だいぶ衰弱してるじゃないか!山崎!山崎ー!」
「はい!って誰すかその娘!?」
近藤に呼ばれて慌てて駆けつけた山崎も、見慣れぬ少女の姿に驚きを隠せない。しかしすぐに状況を察し、駆け寄る。
「女中さんに言って、風呂に入れてあげてくれ!」
「わかりました!」
「総悟も早く着替えろっ。」
「はいよ。」