太陽と月の土壇場

□鈍感と無知は紙一重
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あれから一週間が経ち、翡翠はだいぶ仕事にも馴れてきた。屯所に住み込みで働き、隊士の世話をしている。
隊士も翡翠に気兼ねなく察し、とても充実した日々を過ごしていたのだ。


「翡翠ちゃん、翡翠ちゃん?」


「はい?」


台所で朝食の準備中に、女中仲間である【お蘭】がやってきた。肩まで伸びた黒髪に、活発そうな笑みを浮かべている。
年も近く、教育係としてだけではなく翡翠に色々と教えてくれる友人のような存在である。


「どうかなさいましたか?」


「悪いんだけど、沖田隊長を起こしに行ってくれないかな?まだ寝てるみたいなの。」


「わかりました。」


総悟を起こしに行くのは、翡翠の日課となった事の一つ。どうやら総悟は朝が弱いらしい。
何故か全員、翡翠に頼みに来るのである。その理由は何故か翡翠が唯一、無傷でいられるからだ。
毎日頼まれても、翡翠は嫌な顔一つしない。自分にとっての恩人を、慕わないわけはないのだ。


「毎日ごめんね?」


「いいえ。私で良ければ、毎日起こしに行って参りますの。」


朝食の準備をお蘭に引き継いでもらい、翡翠は総悟の部屋へ向かう。一声掛けてから襖を開けば、総悟は未だ布団に包まり夢の中のようだ。


「沖田さん。朝ですよ、にわとりコケコッコですよ。」


失礼だと思いながら、いつものように掛け布団を剥ぎ取る。総悟はまだ眠たいようで、眉間にシワを寄せていた。


「静かにしてくだせェ…後、3時間程…。」


「いくらなんでも、長すぎると思いますの。皆さんもう食堂に集まっていらっしゃいますよ?」



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