太陽と月の土壇場
□生花になりたい造花。
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銀髪の男と、小さな少女は互いに笑顔だった。また会えることを、楽しみにするように。
「また、ゆきをふらせてね。」
「おう、任しとけ。」
かぶき町に来て、銀時の楽しみが増えた。仲間の亡きがらや敵の血を見続けた自分に、向けられた無邪気な笑顔が嬉しかったのだ。
穏やかな気持ちのまま、その場を離れようとした足は聞こえてきた声に止まる。
「暦ぃいいい!!」
「!?」
何かが崩れる音と、母親の悲痛な叫び声に振り返った。崩れた屋台の下に、先程見たばかりの橙色の着物が見えたのである。
「こよみっ!」
慌てて野次馬を押しのけ、屋台骨を持ち上げる。重さなど感じなかった。ただ、助けたかったのだ。
血に汚れた自分に、無邪気に笑いかけてくれた女の子を―…
屋台骨を持ち上げれば、下敷きになっていた暦の姿が見えた。名前を呼べば、開かれた瞳が自分を捉える。
「っしっかりしろ!今助けてやっからな!」
「お、にい…ちゃ…」
震える手を伸ばしてきた少女の手を握るべく、銀時は限界まで自分の手を伸ばした。
大丈夫だと、元気づけたくて。
「もう少し…っ」
しかし掴もうと握った手は空を掴み、少女の指先を掠める。
「―…っ!!」
そのまま、力無く地に落ちた少女の小さな手。
あと少しで、届く距離だった。
定春が翡翠の匂いを辿ってついたのは、大手製薬会社。銀時は高くそびえ立つビルを見上げた。
「…定春、ここで間違いねぇんだな?」
「わんっ」
「銀ちゃん、翡翠に何があったアルカ?」
「悪いな。説明してやる暇がねぇんだ。新八は俺と来い。神楽には別に頼みがある。
いいな?」