紅の死神
□紅と白
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「……っ!!あ…?」
カーテンにより、光が遮られた薄暗い部屋。
蓮華は夢であったことに気づくと、安堵したように深い呼吸をする。
その次には、眉間にシワが出来た。
「…夢見最悪。」
額を流れる汗を拭い、蓮華が辺りを見回すとカーテンの縁を描くように光が漏れている。
もう夜が明けたようだ。
(朝か…。どうせなら、夜中に目が覚めればよかったのに。)
蓮華は、日の光に極端に弱い。原因はわからないが、まともに日の下にいられないのだ。
思考も鈍くなり体が重くなる上、酷い時は意識を失ってしまう。
あの森にいた時も昼間は日の当たらない場所で過ごしていたが、今ではもう科学班が作った特殊なマントなしでは歩く事も出来なくなった。
最近は、日に日に弱くなっている気がする。
あれから、四年の月日が過ぎていた。
医務室とは別の治療室で眠っていた蓮華は、体を起こして酸素マスクや点滴を外す。
治療装置の電源を切ると規則的な機械音が止み、室内はしんと静まった。
「…今回は、どれぐらい眠ってたんだろうか。」
コムイと婦長しか知らないもう二つの症状は、神田にも秘密にしている。
蓮華は来ていたパジャマを脱いでベッドに投げると、ハンガーに掛けられた団服を纏った。
銀のボタンを留めて、膝上まである長いソックスを履く。
「よっ…と。」
欠伸をしながら長い髪を後ろで三つ編みにした蓮華は、内線の受話器を取った。
「婦長。おはよう。今起きた。…ああ、今食べに行く。お腹空いた。」
部屋を出た蓮華がいた場所は、団員の宿舎ではない。
人気のない廊下に、閉めた扉の音が響き渡る。
(ユウに会えるかな…。)
期待に胸を膨らませた蓮華は、薄暗い廊下を歩いた。