紅の死神

□土翁と空夜のアリア
2ページ/25ページ



夜―…マテールに向かって走る蓮華はマントを脱ぎ、昼間の体調の悪さが信じられないほど快調に走っていた。
隣を走る蓮華に、アレンは安堵した明るい表情を見せる。


「具合はもう大丈夫みたいですね。」


「日が沈めば、至って健康なんだよ。」


"日が沈めば"その言葉に、アレンは汽車の中で神田から聞いた言葉を思い出した。
原因不明の体調不良。本当ならこんな過酷な任務から外れて、詳しい検査や静養するべき体のはず。

しかし、蓮華はそれを望まない。そしてそれを教団は良しとしている。

イノセンスに選ばれた使徒だから。


(きっとそれが、この人がこの場所にいる理由なんだろうな…。)


自分ではどうしようもない。しかしどうしようもない歯痒さを感じる。
しかしアレンは任務に集中しなければと、話をそこで打ち切る事にした。


「…それにしても、マテールの亡霊がただの人形だなんて…。」


「イノセンスを使って造られたのなら、ありえない話じゃない。」


神田がそう口にした途端、周囲に感じた冷たい殺気を感じる。


(何だ、この冷たい感触は…探索部隊の人達は…?)


ピリピリとした空気に、神田と蓮華の2人が探索部隊の死を察した。


「ちっトマの無線が通じなかったんで急いでみたが…。」


「殺られたみたいだな。」


「……。」


「おいお前、始まる前に言っとく。
お前が敵に殺されそうになっても、任務遂行の邪魔だと判断したら俺はお前を見殺しにするぜ。

戦争に犠牲は当然だからな。変な仲間意識持つなよ。」


「嫌な言い方。」


「テメ…」


アレンの発言を聞き捨てならないと反論しようとした蓮華だが、大きな爆発音と銃声にかき消される。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ