紅の死神
□守りたいもの
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マテールを出た神田と蓮華は、次の任務の為にアレンとトマとは別の列車に乗った。
夜に乗り込み、朝には着くらしい。それまで神田が体を休める間、蓮華は起きている。
向かいのベッドで眠っている神田を眺めるのは、蓮華の好きな時間のひとつ。
穏やかな気分に浸っている中、遠くから足音が聞こえた。駅員にしては気怠げな足取りに、蓮華は出入口へと目を向ける。
(こんな真夜中に足音…?)
神田を起こさないように部屋を出ると、前方から誰かが歩いて来た。
徐々に見えてきた姿はボサボサの髪に、ビン底メガネをした若い男。
蓮華の姿に気付いた男は、不思議そうな声を上げる。
「あり?こんな真夜中に何してんの?」
「それはこっちのセリフだ。」
不審がる蓮華の目に男は気にする風でもなく、気さくに答えた。
「一般車両のトイレが壊れたらしくて、上級車両のトコ使わせて貰ったんだ。
いやぁ〜さすが上級車両のトイレはキレイだよね。」
「…お前、変な匂いがする。」
「え゙!?ちょっと酷くない!?確かに今日は、風呂入れなかったけどさっ!」
「そういう意味じゃない。嗅いだことのない匂いだ…お前、"AKUMA"か?」
「悪魔?何お嬢さん、そんなの信じてんの?」
「…いや、何でもない。」
(当然の反応といえば当然か。)
AKUMAの存在を一般人は知らない。知っているとすれば黒の教団の関係者と、千年伯爵の仲間だけだ。