紅の死神
□黒の教団壊滅事件!?
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「怒るかもしれないけど…私はとんぼ返りだったが、ユウと居られたから嬉しいぞ。」
向かいに座る蓮華は、穏やかに笑って言った。その表情に神田は目を丸くすると、顔を逸らす。
「…そうか。着くまで時間あるから寝てろ。」
「?何で急に…。」
「いいから寝てろ。」
「じゃあ、ユウの膝を枕に希望します。」
「好きにしろ…。」
神田の了解も得た蓮華はご機嫌で席を移り、膝にごろりと頭を乗せるとすぐに寝息をたて始めた。
それを確認すると、神田は保っていた平常心を解く。
(ったく、不意打ちだろうが。溜め息ついてた理由が、久々の二人での任務が無しになって残念に思ったからだなんて…。
本人に言えるタチじゃねぇんだよ俺は!!)
つくづく面と向かって、はっきり言える蓮華がすごいと感じる。
好きだろうが嫌いだろうが、面と向かって言うのだ。
そういえば以前、街で聞き込みをした酒場で神田が女に言い寄られていた時。
傍にいた蓮華が、女に向かってこう言ったのだ。
"お前、顔面にヒビが入ってるぞ。石膏か?"
あれはマズかった。厚化粧でヒビの入った顔を、石膏で塗り堅めていると本気で思ったようである。
ギョッとした神田は蓮華に皮膚呼吸が出来ないだろうと納得させたが、既に時遅し。
酒場は水を打ったように静かになり、激昂した女から情報が得られなくなってしまったのだ。
言っていい事と悪い事の分別がつかない蓮華は見た目は年頃の女だが、頭の中はまだまだ幼いようである。
(…つーかまぁ、任務のない時間で一緒に居れて嬉しいのは俺も同じだが…。)
「帰ったら、ゆっくりできるといいなレン…。」
そんな神田の思いは叶わず。これから起こる騒動を現時点では知る由もなかった…。