紅の死神

□記憶の欠片
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蓮華は埃の積もった受話器を持って、耳を当てる。まだ回線が繋がっていることを確認すると、安堵の息を吐いた。


(良かった…まだ繋がってる。ゴーレムを……ん?)


首あたりに手を当てるが、そこにゴーレムはない。川に流されてしまったのだろうと、舌打ちをした。


「チッ…参ったな。本部への通信コードなんて、覚えてないぞ。」


蓮華が頭を片手で悩むように押さえていると、背後に気配を感じる。反射的に勢い良く振り返った。


「―っ誰だ!?」


ワイシャツとズボンをラフに着くずした若い男は、慌てたように両手を顔の横まで挙げる。


「ちょっとちょっと、そんな警戒しないでくんない?」


「お前…ビン底天パ?」


「うわぁーその覚えられ方、傷付くわぁ…。」


髪を後ろへ流し、色っぽい泣きぼくろの男に蓮華は怪訝そうな顔をした。
以前のような無精髭によれよれの服を着ていた男と、同一人物とは思えない。


「眼鏡は伊達か?だいぶ印象が変わるな…。いや、あの眼鏡の印象が強すぎたのか。」


「え?いい男だって?」


「その耳は飾りのようだな。それとも、脳が正しく伝達を受けられないのか…。
ショック療法って知ってる?」


電話本体を持ち上げる蓮華に、男は冷や汗を流しながら降参というふうに再び手を挙げた。


「冗談です。だからその電話を下ろして…。痛いから、マジで。ね?」



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