SF・ホラー・ファンタジー

□忘却の都クバ・ツーイ(※未完)
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*序章 忘却の都*


忘却の都、クバ・ツーイ。

ここはその名の通り、全てを忘れるために創られた街だ。
誰に創られたのか、いつ創られたのか、それは誰も知らない。だが、自然にこの街が出来たのではない事を、この街を知っている者は誰もが知っている。


クバ・ツーイの周りには深い深い用水路があり、正面のただ一つの入り口以外からは入る事が出来ない。時々ひねくれ者がわざわざ用水路を渡って入ろうとしたりもするが、そういう輩で無事に辿り着いた者はまずいない。
正面の門は見上げる程の巨大な重金属の扉ではあるが、それは決して人を拒みはしないというのに…。




ここは始まりの都、クバ・ツーイ。別名そう呼ばれる。

この街に入るとそこは何もない、ただただ荒涼とした銀色の砂漠の山が続くばかりだ。



けれど、生き物はいる。



それはここを訪れた人々と、『クバ』である。
クバは周囲を見渡せばどこにでもいる。
集団で固まっていたり、ぽつんと隅の方にいたり、どこにでもいる。
クバの外形はまるで不思議でる。
それはとりあえず動物っぽい形であった。ひどい説明ではあるが、それ以外例えようが無いのだ。どうすれば伝えられるだろうか。


一目見て頂ければその意味が伝わるだろうに。


しいて…言うならば、それは雲に似ているかもしれない。


人々はよく空を見上げて、「あの雲はパンに見える」だとか「あれはライオンだ」といったような話をする。しかしながら、雲はそんなにはっきりと形作っているわけではなく、見る人やその角度によって様々であろう。
クバもそういう存在なのだ。太い胴に四本の短い足が出ている…ような気がするというのが良いところであろうか。




ではクバは一体何をしているのか?




ここに訪れてくる殆んどの人々は心に深い傷や絶望、または罪などを背負ってやってくる。


クバはそれらを浄化する…らしいのである。


人々は好きなクバを選び手を取り、側で眠り何日か一緒に過ごす。そうするといつの間にか、全てを忘れているそうだ。




…そう、苦くつらい体験も夢も希望も。




過去は全て眠獣クバに喰い尽され、人々には感情と現在、未来だけが残る…。





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