□寂莫の中で
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この子を抱きしめる。

何度も何度も、
飽きることなくぎゅっと。



イオン様にできなかった。
もうできないこと。

この子にならできるの。





わかっている。

「アニス?」

わかっている。

「フローリアン」

緑のやわらかい髪を撫で上げて胸の中へ抱きしめる。
密着させた体温は、思ったより暖かくて。
癖になったように何度も抱きしめる。


時々寂しさが急に襲って来ることがあった。
心に空いた穴に冷たすぎる風が吹き込んで、涙の雨が水溜りをつくるみたいに。
我慢できないくらい寂しくなって、怖くなって。
その度、扉を開いてこの子を捜した。
独りで遊ぶこの子が嬉しそうに笑った顔は、捜していたものじゃないけれど。

わかっていながら抱きしめた。

「アニスぅ?」

きょとんとして、少女の服を引っ張る。
顔をあげれば、似ても似つかない「レプリカ」の笑顔に心を奪われる。

身体がふるえる。
逃げ出したくなる体温、もう一度抱きしめる。



「フローリアン」

わかっている。
だから、許して。

「ぎゅってしてていい?」


この子のぬくもりでいい。

許して。






そうでなきゃ、

おかしくなっちゃう。



 -fin



  
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