□旅立つ恋心
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バチカルを出た際、予想外なことにナタリアが現れ同行することを宣言した。

何やらルークの弱みを握っているらしく、先程からルークが傍目から見ても明らかなほど動揺していた。

それにしてもナタリアには驚かされた、確かに王室にこもりきりといったお嬢様タイプの王女ではなかったが、まさか危険に身をさらしてまでルーク一行に同行するほど国を、民を、平和を愛していたとは。

(王族の血ってやつかねぇ)

久しぶりに会った彼女は、相変わらず凜として胸を張り、優しさを含んだ優雅な笑みを浮かべている。

優しくて、よく気がつく。

だからただの使用人にさえ、気の利いた言葉で挨拶を交わしたり、果ては友人と接するように外出の共とした。

誰もを愛しているから。

だから誰からも愛されて。


「ガイ?」

と、ぼんやりしていたガイは迂闊にも、苦手なはずの"女性"を見つめてしまったうえ、距離を縮められてしまった。
しかし長年使用人としてルークをはじめとした彼らランバルディア王家と付き合って来ただけあって、ナタリアには慣れている。
突然迫られたりしない限り、以前アニスにしたような滑稽なまでの"ドン引きポーズ"はしない…はずだ。

「すみません、ナタリア様、すっかりぼーっとして…」

「まぁ!我々は大切な任務を遂行する仲間、同じ立ち位置で物をおっしゃいなさい」

ガイは苦笑した。
彼女とは昔、何だかんだルークのおもりついでによく遊んでいた。

「あなたは時々、わたくしと距離を置きたがりますわね」

「仕方ないさ、君は王族、俺は使用人なんだから」

「……わかっています、でもそんなことを意識する必要はないはずですわ」

ガイがいつも以上に低空飛行を続けたせいだろうか、ナタリアは少し気を落としたように俯いてしまった。

「………友人なんですもの、わたくしも、ルークとあなたのようにはなれないの?」

思い詰めたように言った。
もしかしたら気にしていたのかも知れない。
わざわざ作っていた、さりげない溝を。
ガイの使用人らしい自嘲気味な笑顔は崩れなかった。
(ただほんの一瞬、息を詰まらせた。)


ふっと目を伏せて、ため息のように吐いてしまう。


「なれるかな」

問うでもなく。
確信を得てもいない言葉。
期待の色さえない。

薄れて、掠れてしまう。


「…なりますわよ」

華やかさを欠いたような王女の顔。
ナタリアは目を閉じてそっと呟く。

「なりますわよ、ガイ」

ゆっくりと澄んだ瞳をガイに向けて、もう一度。


願うように。


ガイはまた息を詰まらせて微妙な動揺を見せた。


(何が言いたいんだ、君は)


ナタリアを見た。
見てしまう。

ほんの少し微笑んだ姫を。



もう、

目が離せなくなる。




















あなたに惹かれてしまう

この気持ちを確かめるために





-fin

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