A
□喧嘩して、
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「導師イオン以外の者のために、泣けるようになったのだな」
しわがれた優しい声が、アリエッタを慰めるように響いた。
黒獅子ラルゴと呼ばれはすれど、鎧を外した物腰はただ図体が大きいというだけの、優しげな初老の男のものであった。
「…ラルゴ、アリエッタは、……シンクのこと…大事に、思ってもい、の?」
何度も躊躇いながらも口にした言葉。
妖獣のアリエッタ。
彼女の瞳の色は赤。
涙に潤むそれは、今はただ一人を見ようとしている。
その不思議な色の瞳で、その不思議な色に心を染めて、焦がして。
初老の獅子ラルゴは、ただ優しく笑った。
娘というものはこういうものなのだろうかとぼんやり考えて、しわのいった瞼を閉じる。
哀れな少女アリエッタ。
哀れな少年シンク。
彼等がお互いに慰め合うように寄り添うこと、惹かれ合うのはただの皮肉か運命なのか。
何にせよ彼等が少しでも救われるのであれば。
ラルゴはまるで、アリエッタやシンクの保護者になったような気分だった。
アリエッタは走った。
あなたに会いたい。
ごめんなさいを言おう。
許してくれたら、
手を繋いで帰ろう。
、