白雪姫の扉
□一人前?
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なんだよ、みんなしてよってたかって子供だなんだかんだ言ってさ〜。
ここは淡雪町にある河川敷。万年は1人憤慨していた。
「俺だってもう一人前のナイトなんだぞ〜!」
災妃との戦いから既に5年の月日が流れていた。万年も人間でいえば13歳………とはいえまだまだ子供である。
しかし、ナイトでいえば十分1人前といえる年なのだ。
基本的には10歳を越えれば力は1人前と認められる。精神は別として………。
要するに万年は、力と精神ともに大人と認めて欲しいのだ。
「万年ここに居たのか。」
「颯っ!?何しに来たんだよ!」
「何ってお前を探しに……」
すると颯は俺の隣りに座った。
「どうせ颯も俺のこと子供だって言いたいんだろ!」
「そうじゃない。」
「……だってそうじゃん。すぐにふてくされて飛び出すし、大人だって認めて欲しいって言ったって、やっぱり子供みたいなことしてるし……」
「そうか?俺は、そういうことをちゃんと理解してるなら十分、大人だと思う。」
「えっ?」
「だってそうだろ?本当に子供なら、そういうことにも気付かずに駄々をこねてる。
だからその分、万年は大人だと俺は思う。」
「………本当に?」
「ああ。」
「そっか。颯が言うなら間違いないよな。」
でも、やっぱり俺は子供だと思う。颯の一言がこんなにも嬉しいと思うなんて……。
単純だからかな?
「じゃあ、帰るぞ。」
「……うん!」
「あっ、その前に、ご褒美をやらないとな。」
「ご褒美?」
すると颯は手招きをした。
なんだろうと近付くと、いきなり抱き寄せられ、キスをされた。唇を重ねるだけのものではなく、何度も啄まれる大人のキス………。
「んっ、んんー、んんんっ」
あまりにも急過ぎて、息の仕方も忘れてしまう。万年はじたばたと暴れた。
すると漸く颯は唇をはなした。
「なんだよ、いきなり!」
万年は顔を真っ赤にして怒った。
「さっき言っただろ?ご褒美だ。」
「何がご褒美だ!息が出来なくなるところだっただろ!」
「……万年は大人なんだろ?だったら、あれくらいのキスは普通なんじゃないのか?」
「……颯のばかー!」
万年は言うだけ言ってパチンと指を鳴らし姿を消してしまった。
「はぁ、まったく見てられないよ。どうしてそう極端なことするんだよ……。」
「細(ささめ)、居たのか。」
「……居たさ。心配して来てみれば、案の定、突っ走った行動とってるし。」
「別に良いだろ。俺は俺なりにやる。」
「そんなやり方じゃ、逃げられちゃうよ?」
「そういうお前はどうなんだよ?」
「僕?僕はそれなりに上手くやってるよ。万年みたいに単純だと、やり易いけど、新はまだ知識が浅いから、その分少し、てこずるけどね……。」
「……そっちの方が心配だけどな、俺は。」
「そう?まぁ、万年の場合は上手く誘導しちゃえば、後は楽だと思うけどね。……でも、颯の場合それが出来ないからだめなんだよね〜。」
細は呆れ果てたように言う。
「良いんだよ、俺は。ゆっくり時間をかけて自覚させてく。」
「余裕だね。そんなんじゃ、その前に誰かに取られちゃうよ?」
こんな会話が繰り広げられているとは露知らず、これから小さな2人のナイトたちの運命は如何に………。
もちろん大人組が相手では為す術などあろうはずもないのだが………。