05/20の日記

22:00
擦違う 2 〜シカマル〜
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放課後の教室に、彼女があいつを呼ぶ声が響く


たまには、一緒に帰ろう という趣旨を懸命に訴えている様子


その懸命さは、なんとなく

彼女も、幼馴染の3人の関係を 

なんとかしたい と思っているように感じた


俺は、そんなやり取りを 自分の席からボ〜ッと眺めていたが 

1つ欠伸をすると さて、俺も帰るか… 

とカバンを肩に担いだ瞬間


サスケが「帰るぞっ」と彼女に声をかける


あいつは、また例の笑い方で

手近に居た俺の腕に自分の腕を絡めると 

「私!奈良と図書館寄って帰る事になってるから!」


 … ハァ!?


「ねっ!」 なんて顔は笑顔なくせに

スットンきょうな顔してる俺の足を サスケ達から見えないのを良いことに
ガンガンと蹴ってくる


「あ…あぁ、そうそう!」

なんて、ヘラリと笑って見せたケド

ぜってーバレるだろ この大根芝居…


彼女は、残念そうに サスケと並んで帰っていった



暫く俺の腕をギュッと握り締めていた白い手を
優しく叩く


「良かったのかよ 」


俺の問いには、答えず 


俯いたままで


「ごめん、奈良…」


今までの力強さが嘘のように、あっさりと手は離れていき


スタスタと廊下を歩いて行く後ろ姿を

ほっとけなくて


「仕方ねえなぁ…」


溜息1つ吐くと

追いかけ、今度は逆に あいつの腕を掴み 

誰も居ない図書室へと引っ張って行く


どうせ泣くのだろう

1人きりで…

他の男を想い泣くおまえを、1人になんてしてやらねぇ


俺は、もやもやとせり上がる気持ちを押しこめるように 腕を掴んだままスタスタと速足で歩く


「奈良… 手首、痛い…」

そう言われて、初めて力づくで握り締めちまってた手を離した

「わりぃ…」


「もう!痛いよ!!奈良のばか力っ!もう、女子に手加減しないなんて、ヒドイ!」


胸をドンドンと叩いてくるコイツに


「ごめん… 」


俺は、ひたすら謝りつづけ その頭を撫でた


「私だって、女の子なんだからね!私だって… 傷つくんだ… 」 


俺の胸倉を引き寄せ顔を埋める


「すまねぇ… 」 


コイツの肩口に触れた俺の手が、自分の胸に抱き込んでしまおうとするのを

ナントか踏みとどまる


「いつも… … 」

最後の方の言葉は、聞き取れなかった


人を傷つけ無い人間なんて、世の中にはいやしねぇだろう 

大なり小なり人なんてそんな事の繰り返しだ

相手に悪気が無いほど、そいつは性質が悪く

無垢な彼女の言動が、コイツのドロドロした部分を炙り出す

そんな自分が、嫌で嫌で仕方がないだろう

たぶん、こんな風に俺に当たることも 後で酷く後悔するだろうに…


もう、 こいつが傷つかねぇように

 … 傷つく姿を見ないで済むように

なにもかもを覆い隠してしまいたい


「だから、俺にしとけって 言っただろ… 」


言葉にしちまったら、あっけなく自分の決意なんて崩れ去り

溢れた思いを誤魔化しきれず

抱きしめた


少し抵抗したが、諦めたのか
されるがままのでいるコイツを

無理矢理にでも自分のものにしちまいたい

やべぇ… 

一端溢れてしまった気持ちは、抑えきれず

溢れて 溢れて 淀んで溜まっていく


コイツと出会う前の俺は、本当 適当で

望まれれば、誰とでも気儘につき合う

そんなんだから、薄く軽いつき合いばっかりで
長続きしない

そんなことばかりを繰り返していた


唯一、自分から望んだのがコイツで


でも、それは…  俺の手には入らない女で


我ながら、バカバカしくて女々しくて諦めの悪い自分に飽き飽きしていた


逸走のこと…


そのまま、図書室の机に押し倒した


「奈良… 」

無言で近づく俺に怯えた表情を見せたが

直ぐ、いつもみたいに悲しそうに笑って


「私は、奈良に甘え過ぎなんだ… 奈良の気持ちを考えずに… 」

俺の目をシッカリと見て

「だから… いいよ…  なにしても… 」

俺は一瞬戸惑ったが、 欲望の赴くまま その白い首筋に顔を埋める


自分のものに、 


どうせ手に入らないなら


一度でも触れて 


汚して 消えない傷を残したい


あいつを忘れるくらいの でっかい傷を…


身体を起こし コイツの細い指に 自分の指を絡めながら

その薄茶色の瞳を見据える


コイツの瞳に映るのは… 


 ……


「 … やっぱ、俺のガラじゃねぇや 」


俺は動きを止めると

手を差し伸べ身体を起こしてやる


ゆっくりと起き上がるコイツの腕を引き寄せ 
再び惜しむように抱きしめた


「おまえ… 胸ねぇな 」


おとなしく抱きしめられていたハズが 剥きになって飛んでくる手を受け留める


その手と背を押し


「送って行かねぇぞ… 」


図書室の扉から押しやる


「奈良… 」


何か言いかけていたが  その扉を閉めた


暫く 扉の前で佇んでいる気配がしたが

夕闇と共に、ゆっくりと立ち去っていった


俺の見たいのは、悲しそうに笑うおまえじゃない


俺に抱かれたって おまえ… 笑えるようには 


 … なんねぇだろ

 
ずっと握り締めてた手が、いてぇ


さっきまであいつが横たわっていた机をそっと撫でる


まだぬくもりが、残っていそうな気がして


指先を滑らせるが ひんやりとしたその無機質な感触に


机を思い切り蹴飛ばした




図書室を出ると
俺は、なぜか走って走って


サスケの家の前まで来ていた


だが、どうしてだか  
そっから、どうするのか


まったく考えていなかった


俺らしくもねぇ…


暫く乱れた息を整えていると


「おまえ、家の前で何してんだ 」


聞こえた 今は一番聞きたくナイ声に振り向く


「偶然だ… 」


「すごい偶然だな 」


確かに…

サスケの住む家は、この町の外れにある

そこは、閑静な住宅街で
用がなければおよそ訪れる事は無いだろう場所だ


鼻で笑いながら歩きだすサスケに

促されるように 一緒に歩きだす


近くの公園までくると


「なんか言いたいコトがあるんだろ 言えよ 」


そのイケすかねぇ面で 俺様口調… 


俺は一生こいつとは、相入れないだろう


朱色も薄れ 灰色と濃紺が混じる空を仰ぐ


やっぱ俺は、雲になりてぇ


もう人は、 めんどくせぇ…


空を仰いだまま このどこから話せばいいのか分からない話を

イヤ、そもそも コイツに何を話すのか…
考えあぐねていると


「どうした まさか、マジで偶然だなんて言い張る訳じゃないよなぁ 」


俺は、盛大に溜息をついてから


「オマエ、 あいつの気持ちに気づいてるんだろ?」


口をついてでた言葉


それは、ずっと聞きたかった事のような 

聞きたく無かった事のような 内容だった


サスケは、まだ空を見上げて そっぽを向いている
俺に構わず 

シッカリと視線をよこして

「あぁ、」

とゆっくり答えた


「なんとか、 してやれねぇのか… 」


サスケは、顎で俺を指すと


「おまえがそうやって傍にいるのに、俺に意味は無いだろう 」


 … … …


もっともだ… 

思わず笑った俺に


「守りたいものは、自分で決めろ  決めたら、迷うな 」


コイツ… かっけぇ〜 さすがモテ男bPなだけある

俺とは、全然違う  

妙なところで納得して 苦笑いした


「おまえは、優し過ぎんだ 責めるとこ責め無いと
誰にでも優しい八方美人なヤツなだけだ 」


イテぇとこ突かれたな…


「どうせおまえの事だ、あいつの気持ちとか 考え過ぎんだろ 」


俺は、空から この洞察力に優れたイケ面に視線を移すと












「俺から言わせりゃあ、おめぇは自己中過ぎだ
もっと周りに気いつかいやがれ 」


フフンなんてせせら笑いやがったサスケを背に

俺は、歩きだす


後ろ手に手を振って 

「礼は言っとく、ありがとな 」

振り返らずに そのまま駆け出した


情けねぇ… 

よく考えたら 
俺、あいつにキチンと告白したことがねぇ

態度に出してそれで伝わったつもりでいた

あいつの気持ち知ってて 諦めてたからってぇのもあるかもしれねぇが

そのわりには、強引に押し倒したり…

それでも、“好きだ” も言えなかったどころか

ビビッて引いちまった…  

サスケの言う通りあいつの気持ちを考えて  
てぇと聞こえがいいが

結局、臆病で 踏み出せなかっただけだ…



夕暮れの川べりに見知った影


「よっ、 」


後ろから声をかけると酷くビックリして


「なんでここが…? 」


俺は、あいつの横に座り込むと


「サスケに聞いた… おまえ小さい頃から何かあると此処に居たって 」


俯き、膝を抱え縮こまる姿が だんご虫みたいで
素直に口にしたら 頭を叩かれた


「いってぇなぁ…」


頭を擦ってると


「奈良の事… 悩んで 考えてたのに… 」


イジけたように膝頭に額を擦りつけ、ぶんぶんと首を振るコイツの頭をポンポンと叩くと


「嬉しいねぇ… ちょっとは、俺のコト考えてくれてたんだ 」


「奈良… ニヤニヤし過ぎ… 」


白い目でこっちを睨んでる可愛げのナイこいつを抱き寄せる


もう辺りは暗く、空には宵の明星が瞬く


「1回しか言わねぇ… おまえが好きだ 
サスケより、 俺を選べ 」


あいつの手が、躊躇いながらゆっくりと俺の後ろに回り

背の上着を握る


「時間… かかるかも  知れないよ… 」


「構わねぇ  どうせここまで待ったんだ 
何年でも待つさ 」


俺は、こいつの頭を自分の胸に抱え込み

空を見あげた


もう空には、無数の星が輝いていて

三日月が浮かびあがる


「 … そんなには… 時間… かからない… かも… 」


胸の内で聞こえた消え入りそうな 小さな声に


人も悪くねぇかも…  そっと笑った











end










長々、お付き合いありがとうございました<(_ _)>

今回のテーマは、“シカに思いっきり片思いをさせたい”だったのですが… 

どうでしょうか…? ←不安(^^ゞ


毎回、素敵な挿絵を描いて下さるエリー様

ありがとうございます \(^o^)/

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