08/08の日記

09:22
遠まわり     →暴力的表現アリ注 切甘
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中忍試験の打合せも終わり

これから、砂へと帰るテマリを見送りに
門まで歩く 


何度も行き来した道


途中 シカマルが、
いつも立ち寄る茶屋の前で 
立ち止まる

「茶屋に、寄らなくていいのか?」

と、尋ねると


テマリは、視線も合わせず 
「…今日は、いい」

と言う


シカマルの眉間に、シワが寄る


この3日間の滞在中の
テマリの様子が、
シカマルを不安に駆り立てていた 


最初にきずいたのは、

木ノ葉に、テマリが到着した時だった

いつもなら、

「また、お前かぁ〜」

などと、軽口叩き 
それでも、どことなしか嬉しそうに 微笑んだりしてくれていたのに


表情を、ひた隠しにしようとする


会議などで、目が合うと
ほんの少しの変化だが
悲しげな瞳が 見えたり


滞在中、何日かは 
必ず、シカマルの家に来て
父、母と4人で ごはんを食べるのが、決まりゴトのようになっていたが

今回は、
『資料作成が 間に合わない』 との理由で
家には、一度も来なかった


おかげで、シカクから

「なんで、テマリちゃんは 来ねぇんだよ〜」

と、寂しげな表情で 
ネチネチと 責められた



シカマルの心の中が、騒めく
徐々に襲ってくる 焦燥感に、鼓動が早くなる



一瞬戸惑ってから


シカマルが、テマリの背中に 声をかける

「…テマリ … なんかあった…か?…」


歩みが止まる


少し間があって
ゆっくりと テマリが振り返り

「なんだ?…どうしたんだ?」

と 完璧な笑顔でシカマルを見る


その表情に
一層つのる不安感を
こぶしを握り締め、必死に抑える

「…嫌 …なんでもねぇ… 」

テマリは、

「…変なヤツだなぁ〜」

と、また笑う




門に着き


「じゃあな…」

と、背を向けて 
サッサと立ち去ろうとする
テマリの手を掴む


自分の方に、顔を向けた
テマリの、翡翠色の瞳を見つめる


「…また、…めし食いに来んだろ?…」

「あぁ…」

視線を、合わせない テマリ
脳内で警告音がする


握った手を、解かれそうになり
シカマルが、再度強く握り締める

「…おやじも かぁちゃんも、寂しがってたから…
今度は、必ず 顔出してやってくれ…」

「…あぁ」

いくらシカマルが覗き込んでも
絡まない視線

何に対しての、警告(音)なのか

薄々気づき始めている自分を、押し込める



ゆっくりと、手が解かれ


テマリは、素早く駆け出し 門をくぐる



シカマルは、小さくなっていく テマリの背を、ずっと見つめながら

唇を噛み締めていた


今にも、溢れる想いが 口をついて出そうになる


それを、彼女は望んでいない事が

…分かるから


血が滲むほど、強く
唇を噛み締めていた







次の瞬間…




心臓が、早鐘を打つ



漠然とした想い や
曖昧に、しておきたかった事が…


…ハッキリと分かってしまう


いつもは、振り返りもせず 去っていくテマリが



立ち止まり



シカマルの方に、笑顔を向けていた


初めて絡む視線



その笑顔が、淋しそうで…
苦しそうで…






もう二度と、
逢えないコトを…

告げていた




「テマリッ!」

叫ぶも、もうテマリの姿は 無く


手に残る、微かな温もりだけが
彼女の存在を継げていた


確かめるように
繋がっていた手を見つめる

テマリの存在が、温もりが
、手のひらから
零れ落ちてしまいそうで
慌てて、手を握り締める




目頭が熱くなる


空を仰ぎ、雲を眺める


それでも、堪えきれな想いに


顔を手で隠した








それから、程なくして



テマリが、風の国の大名の子息に 嫁いだことを知った










〜5年後〜

シカマルは、変わらず
ひがな休日を 縁側に寝そべり過ごしていた

変わった事と言えば、中忍から上忍に上がった事ぐらいで

一見、変わりのない日々を 過ごしていた


雲を眺める


思い出すのは、決まって
彼女の顔

今だ、一人の女を ずっと想い
忘れられずにいる自分が、女々しいと思う


あの時
怖がらずに、もっと聞いていたなら


去っていく背中を
追いかけて、抱きしめていたら


いくつもの後悔の想いが、過ぎ去る年月と共には
風化してくれず


心の奥底に、トゲのように 刺さっていた




“…今 彼女は、幸せなのだろうか…”



溢れ出る想いに、目を閉じて やり過ごす




側に置かれた将棋板から
パチン と音がする

目を開けると、
シカクが駒を進めていた


「…なんか…考え事か? 」

探るような シカクの視線に

シカマルは、めんどくさそうに ため息をつき

「…そんなんじゃ、ねぇよ…」

と、雲を見上げる



「…シカマルよぅ…あの噂… 聞いたか?」


その言葉に、
シカマルの身体が、ピクリと反応する

「…知ってんだな…」

シカクは、それきり何も言わず 
部屋に戻って行った





シカマルも、ここ数日で耳にした噂…

『大名の子息に嫁いだ風影の姉が、夫から 酷い暴力を受けているらしい 』


シカマルは、密かには
信じがたかった

“あのテマリが…”

シカマルの知っているテマリは、
気が強く 腕っぷしも強い
それは、いつでも 大切な自里の為に 
強く在ろうとする テマリの真の部分だ


なのに…



何度も同じ疑問が浮かぶが、
シカマルの頭脳をもってしても 
分からない事だった




ある日


綱手から、呼出しがかかる

火影室に行くと


我愛羅が、居た


怪訝な表情のシカマルに、
綱手は

「シカマル、お前に 風影殿の案内係を頼みたい」

と、任務を命じた


シカマルは、我愛羅と綱手を 交互に見て

「風影様ですし…俺なんかじゃない方が、…いいんじゃないですか?」

と、ため息をつく


「まぁ、そう言うな」

綱手は、シカマルの首に腕を回し

「火影命令だ、粗相のないようにしろよ
わかったら、早く行け!」

と、半ば強引に火影室から追い出した


暫く沈黙のまま歩く2人




背後に感じる 我愛羅の気配に、落ち着かない



沈黙を破り
我愛羅は、シカマルの背に 問い掛けた 


「奈良、お前 まだ… テマリの事を、
…好きか?」


シカマルの目が、見開く


「…、めんどくせー…
何が言いたいんですか?」

振り返りもせず、答える背中に

再度話し掛ける

「近々、テマリが 木ノの葉に来る」

揺れる背中
だまり込む、シカマル


「…俺には、関係ナイっすよ」

弱々しく、絞りだすような言葉



「… テマリは、好きで 嫁いだ訳じゃない
お前の事は、傍から見ていても… 本気だった…」

「もういいっすよ…」

我愛羅が言い終わらぬうちに
シカマルが口を挟む

「…分かってますから
…もう終わった事です…」

「奈良…」


「…分かってるんすよ…」

自分に言い聞かせるように、呟く シカマルの 握り締めた拳が震える


「…奈良、お前に頼みがある」

一つ深呼吸をした後
更に、我愛羅が続ける

「…ここの里でも、噂になっている事だが…
…真実だ」


シカマルの表情が歪む
振り返り 我愛羅の顔を見る

「…なんで …だってあいつは…」

色々な気持ちが入り交じり、言葉が出てこない

腹の底から、こみ上げる怒りに
我愛羅を睨む

「わかってんなら、なんで…」

「理由が、分からない…」

いつも、表情を崩さない 我愛羅の瞳に 微かだが
愁いが混じる

「どうしてその立場を、受け入れているのか
砂に帰って来ないのか…
分からない」

多くを語らない我愛羅だが、気持ちが 汲み取れる

「お前に、このような事を 頼むのは…
筋違いだと…
分かっているのだが…
オレ達では、どうしょうもない…」


暫く、我愛羅の言葉を黙って聞いていたシカマルが
口を開く



「…で、俺に頼みってぇのは?」





我愛羅の話しによると


最初は、テマリが ひた隠しにしていたので
現状に、気づくのが 遅れた事

テマリの受けている暴力に、気づいてからは
帰って来るように 何度も勧めたが

「私は、大丈夫だ
これは、報いなのだから…」

と、頑として そこから動こうとしないテマリの 

真意を聞き出し、説得して欲しい とのコト


テマリと、大名の子息には
火影直々の命で、
どうしても テマリでなければならない任務で、
国益に関わる事だから と、今回の木ノ葉の任務を しぶしぶ承知させたと



「考えさせて欲しい」

ハッキリした態度を示さないまま


我愛羅とは、別れ




シカマルは、いつもの丘で寝そべっていた



考える



“あいつが、大切にしている 兄弟や 砂の里の皆が
説得してダメなのに、
果たして… 俺が、できるのか… 

そもそも、俺なんかが
彼女の前に現れても、いいのか…”


考えは、まとまらない…





家に帰ると、

シカクが、酒瓶を片手に

「ちょっと、付き合え」

と、縁側まで導いた


暫く、二人
酒を煽っていたが

シカクが、口を開く

「テマリちゃんの事、五代目から聞いた…
風影様が、直々に来てるんだ
よっぽどの事だろうよ
お前…
どうするつもりだ?」

シカマルは、池に映る 月を
ぼんやりと見つめながら

「今更… 俺の出ていく幕じゃないだろ…」

と、視線を反らさずに
酒を煽る


「冷てぇなぁ
仮にも、好きだった女が
今現在、大変な思いをしてる てぇのに
知らんぷりかよ」


シカクの言葉に、苛つく


「シカマルよぅ、色恋なんて
どっちが傷ついたとかじゃ、測れないんだぜ」


「…どういう意味だよ」


シカクを睨む


「お互い様って事だ…
今回の事は、お前にもちとは 関わってると思うがな」


シカマルの驚いた表情に


「なぁに、俺の感だ」


と、シカマルの肩に手を置き、立ち上がると


「後は、よく考えるこった
その無駄にいい頭でな」

と、シカマルの頭をポンポンと叩き
部屋に戻っていった






数日後



シカマルは、門で 人待ちをしていた

腕組みし、壁に寄りかかり
目を閉じる



門の側まで来た
目的の人物は、シカマルの存在を確認すると


躊躇し、歩が止まる


しばし立ち止まった後


ゆっくりと歩きだし、シカマルに近づく


「また、お前か」


以前より、弱々しいが
発せられた変わらない言葉に
胸の奥が、軋む


「わりぃかよ」


シカマルも、流れた月日を戻すように
答える


心なしか、彼女の瞳が
潤んだように感じた


久しぶりに目にした彼女は、痩せていて
以前の凛とした強さが、感じられなかった


この暑い時期に、長袖のアンダーを しっかり着込み
首には、以前は 額に戻っていた額あてが、拡げて巻かれていた
まるで、胸元を隠すように


火影室まで、人通りの少ない道を選んで歩く

周囲からの視線を、気にせずに済むよう

シカマルなりの、配慮だ


「…元気だったか?」


思い切って、話す シカマル


問いには、答えず


「…ここは、変わらないなぁ」

と、呟いた彼女の横顔に
見惚れる

慌て、視線を反らし
紅いであろう顔を、手で隠す



何も話せぬまま、火影室に着くと

五代目は、笑顔で


「テマリ、久しぶりだな
急な用件で すまないな」
と話し

シカマルには、廊下で待機 と命じる


「火影様、お久しぶりでございます
今回は、直々の命と承りましたが
どのような?」


綱手は、テマリの肩に手を置くと

「まぁ、そう焦るな
まだ、準備が出来ておらんのでな
明日また出直してくれるか
宿は、取ってあるから
今日は、ゆっくり休め」




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