08/13の日記

02:50
遠まわり 2
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綱手が、シカマルの名を呼ぼうとした時


テマリが、遮る


「お願いが、ございます」

「なんだ」


綱手が、テマリを見つめる

「…奈良シカマルを、案内係から 外して下さい」


綱手の顔が歪む


「それは、聞けない願いだなぁ」


驚いた顔のテマリに
綱手が、続けて話す


「残念だが、今は 殆どの上中忍は 出はらっているお盆の時期でもあるし、祭りも近いのでな」


「…では、案内係は… 要りません」


綱手は、腕組みをし
眉間にシワを寄せる


「わがままを、言うな
そんなコト、出来る訳ないだろう」



綱手は、シカマルを呼び
宿まで案内するよう 命じると

テマリの側に寄り
耳元で、囁く

「テマリ
今のお前には、こいつが必要なように、私は感じるがな」


シカマルの方へと、
温かい手が 背中を押した





2人して、火影室を出ると

もう、夕暮れに藍色が混じる


話す言葉も思いつかず
沈黙のまま
宿までたどり着く


「わざわざ、すまなかった… じゃあ 」


テマリが、宿に入って行こうとした瞬間


シカマルが、腕を掴む


小さな悲鳴と共に、腕を庇うテマリに

シカマルは、慌て手を離す

「わりぃ」


手を離す瞬間、アンダーの袖口から見えた
赤紫に変色した痣
熱をもった腕に


「…どうしたんだ、それ」


シカマルが、袖口を捲り上げた


現れた無数の痣に
言葉を失う


顔を歪め、勢いよく手を引っ込めて そのまま部屋まで駆け出して行ってしまう テマリ



シカマルは、目にした事実に その場に茫然と立たずむ事しか、出来なかった





テマリは、部屋に戻ると


勢いよく、顔を洗う

何度も何度も洗い


ようやく冷静になれたころには、髪から 服から びしょ濡れだった


冷静になった途端
掴まれた腕の痛みを、感じ
流水で冷やす


腕の痣が 熱いのは
シカマルが触れた、手の温もりが
いつまでも残っているように感じるから


「…私には、触れられる権利なんて… ないのに…」

溢れそうな瞳の雫を、唇を噛み 堪える


流水は、段々と痣の熱を
奪っていくのに


心の中に 燻っていた
奥底に秘めていたはずの 熱 たちは
なかなか消えては、くれなかった


木ノ葉には、二度と足を踏み入れる気は、なかった


お互い、逢わなければ
いつかは、思い出に変わると 思っていた

そうできると…





扉を、ノックする音がする

開けなくても、気配で分かる


「…何しに来た 」


「…ウチの薬と、綱手様からの内服薬持って来た」



扉を開く事を、迷う


少し、間があってから


戸惑いがちに、
でも 開かれた扉に
シカマルの安堵のため息が洩れる


髪も服も、びしょ濡れのテマリに 驚き
無意識に、手を 差し伸べようとするも
途中で、引き留める


“彼女は、人(他の男)の者…

触れては、いけない…”


胸の奥から、込み上げてくる想いに

慌てて

「…さっき、熱がある気がしたんで 解熱剤 と
ウチの塗り薬… よく効くから…」

と、袋を差し出した


テマリは、平静を装い
笑顔を浮かべて話す


「…すまない 綱手様にまで、手を煩わせてしまって
これは、任務でドジってな…」


自分の腕を 擦りながら
話すが、
言い終わらないうちに

シカマルが、テマリを抱きしめる

昔と変わらず、こんな時でさえ 強がるテマリが、意地らしく 愛しく思う



「もう、いいから…」


触れては、いけない者に触れてしまった
罪悪感 や
ずっと、触れたかった者にやっと触れた
満たされた想い…

色々な感情が、入り交じる



腕の中のテマリは、慌てて身体を離そうとする


「なっ…なにするんだ!離せ!」


離れようとするテマリを、ギュっと 捉まえ


「嫌だ…」


ハッキリ言い


逃げられないように、スッポリと優しく 包み込む


暫く、じたばたと藻掻いていたテマリだが


腕を緩める気の無い
シカマルに


諦めて、おとなしくなる


懐かしいシカマルの匂いに、溢れる涙を 必死で堪える


「…離してくれ 私は…
お前に触れられる、資格は… ない…」


頭上から、少し擦れた
シカマルの声が 降ってくる


「…なんの資格だよ…
俺が、触れてぇんだ…
やっと触れられたんだ…
頼むから…、
暫くこうしていさせてくれ」


テマリの肩が、小刻みに震える


逢わない間に、薄くなってしまった肩
抱きしめて分かった
以前より、二廻りも細くなり 今にも折れそうな身体


その現実に、胸が熱くなる


いつまでも、震えている肩を 離し
濡れた瞳を覗き込みながら
ずっと言いたかった、
ずっと言えなかった
言葉を、綴る



「テマリ… 俺の処に、戻って来ないか…」


シカマルの想いが、心に染み込んでくる


耐えていた嗚咽が洩れ、
堰を切ったように 泣き出す テマリ


「…私は… お前を…
忘れた事など…無かった…
忘れられずに…
ずっと… お前を…
シカマルを… 思って…いて
そんな私が… シカマル…
じゃない… 他の男に…
嫁いだのが… いけなかったんだ…」


しゃくりあげながら
ゆっくりと話す テマリの濡れた髪を、優しく撫でる


「…俺だけじゃ …なかったんだ」


目頭が、熱くなる

零れそうな涙を ごまかすように
テマリの肩に顔を埋め
強く抱きしめる


「俺も…ずっと、同じ想いだった…」


肩口で 囁かれる 息遣いに
側にある耳が熱い



2人、どちらから共なく


見つめ合う

唇が重なる



一回 溢れてしまった想いは、留まるすべを知らない

逢えなかった時間を、取り戻すかのように


徐々に深くなる口づけに


シカマルが、名残惜しそうに
身体を離す


「…これ以上しちまうと、…止められなくなっちまうから…」


上気した頬、擦れた声で、絞り出すように呟くシカマルの艶っぽさに

頬を染めながら
テマリは、シカマルの胸に顔を埋め
ベストを強く握る


「…いいんだ…」

消え入りそうな、小さな声が聞こえ

シカマルの目が、見開く


「… いいのかよ…
ケガもしてるのに…」


ベストを握る手に、力が籠もる


「…後戻り、出来ない」


テマリのその一言に、
シカマルの自制心が
跳ぶ


ベットまでテマリを抱き上げ、そっと下ろし


着衣を、ゆっくりと 取り去っていく


キレイな肌が、露になっていくたび
増えていく痣に
シカマルの眉間に、色濃くシワが寄る


その表情に、


「…キレイな身体じゃなくて… ごめん…」


と、泣きそうな顔で微笑む

「昔と、変わらねぇ…
キレイだ…」


テマリの頬に触れ
溢れ落ちそうな涙を、指で拭い


痣の1つ1つに、優しく 口づけを落としながら


身体を、重ねていく


濡れた衣類から 体温を奪われ
冷えたテマリの身体に、

自分の熱を 移すかのように 触れていった



すっかり暮れ落ちた
夜の闇に、月明かりだけが差し込む 


お互いを、愛しむような繋がりは
時を巻き戻すかのように 
月が、色を失うまで 続いた







シカマルが、目覚めると


隣に居るはずの テマリの姿は、無かった



まだ、覚醒しきらない頭で 記憶を辿る


夢だったのか…?


この5年間、嫌というほど
見た夢


テマリを抱きしめる夢


目覚めて、夢だと分かった時に襲う 絶望感

腕には、しっかりと
抱きしめた感覚や温もりが、残っているのに…


刹那さに一睡もできなくなる


そして… また、忘れられなくなり


想いばかりが募る

残酷な夢…



しかし、今は
密かな、テマリの残り香が 夢ではない事を、告げていた


慌てて着替え
火影室に行くと


綱手から“明け方帰った”と、聞かされる


ガックリと肩を落とし
ため息をつくシカマルに


綱手は、微笑みながらも

「これからが、大変だぞ!」

と、激を飛ばす


「…分かってますよ」

と、顔を紅くしながら
そっぽを向き 頭を掻く





自宅に戻ると


シカマルを見て、
ニヤニヤと笑う シカクが居る


「…うるせぇんだよ、クソ親父っ」


「俺は、何も言ってないぜ



喉の奥でククッと笑うシカクを、一睨みすると


自室に、駆け上がる


勢いよく、ベットに横になると


昨日の出来事が、頭を掠める


落ち着いて思考を巡らすと

想いが繋がった 嬉しい気持ち とは反面、
不安が込み上げてくる


自分は、テマリの気持ちを しっかり聞けたのか

それに、応えてやれたのか

あんなふうに、身体を重ねてしまって
よかったのか


嫌な思考ばかりが、シカマルを支配していく


頭を振り、思考を遮ると


テマリに触れていた、自分の手を見つめる


二度と、5年前のような想いは させたくない


繋がったんだ


今度は、絶対 手を離さない


強く手を握り締めた






次の日



綱手から、

「お前宛に、我愛羅からだ」

と手紙を渡される


任務後、いつもの丘で
手紙をひろげる
達筆な我愛羅の文字


そこには、


テマリが、けじめ をつけに 子息の元へ戻った事

心配だが、

テマリの以前とは、違う 表情と 軟化した態度に

何かあれば、介入する事
約束させ

しばらく、様子を見る事にする


との事が、感謝の言葉と共に
綴られていた



シカマルも、一抹の不安を抱くが


テマリと我愛羅を、信じて待とう と思った




それから、
1ヶ月… 2ヶ月…  と経っても


テマリからも、我愛羅からも、連絡は無く
日々が過ぎていく


どうなっているのか分からない状況に、不安と苛立ちが募る



更に、1ヶ月ほど過ぎた頃


休日に、丘に寝そべって過ごす シカマル


数ヶ月前の あの出来事が、遠い昔のように感じる


元気だろうか…

酷い事を、されていないだろうか…


流れる雲に想いを馳せていると


呼出しの鳥が飛ぶ


シカマルは、ため息をつくと 重い腰を上げ
火影室へと、向かった



急な任務だと思い
てっきり 何人か人が居るのかと思っていた火影室には、
自分と綱手しかおらず


その綱手の眉間のシワの濃さに、不安が過る


綱手は、シカマルを睨みながら


「シカマル… 我愛羅から連絡があった」


「…なんて?」


シカマルが、逸る気持ちを抑え 訪ねると


1つ深呼吸をして、
綱手が話す


「テマリは、子ができたそうだ…」


“えっ?!”

綱手の言葉を、理解できないでいるシカマルを 無視し
更に続ける


「子の父親は、…どうやら
大名の子息では、ないらしい」


シカマルの目が、見開く


「今、砂では 父親が誰であるか
問題になっている…」


綱手は、額の前で手を組

ゆっくりと言葉を、続ける

「…お前、心当りは…
あるか?」


困惑した顔のシカマル

素早く、頭の中を整理し
答える


「…はい」



すると、綱手の怒号が飛んでくる


「ばかかっ!16・17のガキじゃあるまいし
後先考えなかったのか!
まだ人妻だぞ!!」


「……」

冷汗が流れる


「仮に、百歩譲って
ヤルなとは 言わない!
なぜキチント、気遣わなかった!」

一通り、怒鳴った後

綱手の言葉に、顔を紅くするシカマルに

また、ため息が洩れる


綱手は、真剣な眼差しで


「…今、テマリが どのようになっているか…」


その言葉に

シカマルは 窓から飛び出す


「シカマル!取り敢えず、我愛羅の処へ行け!」


綱手の言葉に
後ろ手に、合図し


スピードをあげる





やはり、自分の行動が
浅はかだった


「テマリ… 大丈夫か…」

小さく呟く



気持ちが急いて、足が絡まりそうになりながら

砂の里に向かった




→3へ まだ続く(;^_^A

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