08/16の日記

10:20
遠まわり 3
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夜通し駆け抜けて
3日かかるところを、2日で 砂の里に到着する


すぐさま、我愛羅の処に
顔を出す



挨拶もそこそこに、必死な表情で

「言訳は、しねぇ…
もし、テマリが助かるんなら
俺は、どうなってもいいから」


汗だくのシカマルを

我愛羅は、一瞥し


「事は、そんなに簡単ではナイ」


ため息をつく


「お前には、砂の上役の喚問に出てもらう
…お前に頼んだ、オレの責任もある 同行する」


「いや…でも、テマリは?!」

「奈良… 落ち着け
今、カンクロウが 動いている
報告を待て
話は、それからだ」


シカマルは、渋々 我愛羅と
上層部の待つ会議室へと向かう






一方
カンクロウは、風の国
大名の屋敷に居た



テマリへの面会を、願いでると


“今は、適わぬ
本人も、会いたくない と言っている”

との 子息からの伝言を受ける


ちぇっ!舌打ちしながら

「表から正々堂々がダメなら
忍らしく裏から行くじゃん」

と、不敵に笑う



テマリの気配を辿り 静かに移動する


途中

「…テマリ様、大丈夫かしら? あんな仕打ちを受けて」

「自業自得でしょ」

「でも、最後まで お子の父親が誰か 言わなかったんでしょ?
お腹も、ずっと庇っていたって言うし
よっぽど、その方の事
好きなのねぇ〜」


と、噂話が耳に入る


カンクロウの額から、嫌な汗が流れる

テマリの身を案じ、急ぐと



地下に通じる通路から
密かに、テマリの気配がする


その弱々しさに、カンクロの足が 速まる


地下は、いくつもの牢になっており

その1つで、テマリの姿を見つける


「テマリっ!」


なんなく鍵を開け、テマリへ 駆け寄る


気を失い、横たわる テマリの怪我を見て、息を呑む


女中達の噂話が脳裡を霞め
眉をひそめた



遠くから、人の気配がする

“出入口は、1つ…”


テマリを、抱え 
牢から出ると


いつでも傀儡が使えるよう、態勢を整える


「…テマリを、連れて行くのか?」


蝋燭の灯りに照らされて
子息が、近づいてくるのが 見える


戦闘態勢を、緩める


「…もう、仕方が無いのかもしれない…」


悲しげな表情の子息


カンクロウは

「テマリは、連れて行く」
とだけ告げると


横をすり抜け、通路へ出ようとする


「最後に… もう一度、顔を見せては… くれまいか」


カンクロウは、少し考えた後

危害を加える様子は、感じられなかったので

子息の側に、テマリを 横たえる


側に座り込み
愛しげにテマリの頬を、撫でる子息


「…綺麗だ… 昔と ちっとも変わらない…」


カンクロウは、不思議な気持ちになる


「そんなに思っていたのなら、なんで…」


一呼吸置いてから、子息が語り始める


「彼女は、私の初恋だった…
16の時 1つ上の彼女が、私の護衛任務に就いた…
一目惚れだった
真の強い処も、勝気な処も
…とても、好きだった」


「そんな昔から…」


カンクロウが、驚く

子息は、ずっと
テマリから視線を離さず
尚も、頬を撫でながら


「そうだな… 長い間
思っていた……
その間に、政略結婚の話は 何度もあったが
彼女としか、添い遂げるつもりは 無かった」


自傷気味に笑う


「この結婚こそが、彼女にとっては 政略結婚以外の なにものでも無かったというのに…」


胸が詰まる

カンクロウは、何も言えなかった



子息は、横たわるテマリを抱き上げ


「申し訳なかった…
謝って済む事でもないが
風影殿にも、改めて頭を下げに行く」


と、テマリを カンクロウの元へ そっと戻す


「城外に、馬を用意した
使ってくれ」


最後に、テマリの手を
両手で包み込むと


「…こんな形では無く
お前に、もっと触れたかった…」

カンクロウが、戸惑っていると

「早く行け、
本当は… 今でも 手放したくは ないんだ」


握り締めた拳が、震えていた


「…テマリに、何か伝える事は?」


「…恨んで欲しい と…」

“ずっと恨んで憎んで…
忘れないで欲しい…”


悲しい、子息の微笑みに

やりきれない思いを引きづり

城を後にした






砂の里では、シカマルと我愛羅が 喚問を受けていた

数段上に、一列にズラリと座る 上役達

その前に、シカマルが立ち
我愛羅は、近くにある椅子に座る

急に、前方から声が響く


「里名・名前と所属を言え」


「木ノ葉隠れの里
奈良シカマル
上忍」


「テマリとの関係は?」


「…一応、恋人だった
里の為にと、政略結婚をしなければ ならなかった
5年前までは…」


室内が、騒めく


「今は、関係は無いのか」

「…ある
子供の父親は、俺だ」


怒号が飛びかう

 
「風影様は、このことは
知っておられたのか?」


その言葉に、一早く反論する


「我愛羅は、関係ないんで」


口を出そうとした我愛羅を
シカマルが、遮る


「後は、何が聞きたいんですか?」


「テマリは、今現在 大名の子息の妻だ
それを承知で、手出ししたのだな」

他の上役が、続ける

「この里の、不利益を
どう責任を取るつもりだ」


「…そこは、言い訳はしない…
どんな罰でも、受けるつもりだ」


キッパリと、言い切るシカマルに


「極刑でも、承ける覚悟がある
という事だな」


と詰め寄る上役達


「あぁ」


シカマルは、その上役達を見据え 答える


「里が違う、お前達が お互いの里の不利益になるとは、思わないか?」


「不利益? 情報漏洩って事なら、
付き合っていた4年間
木ノ葉の情報が、砂に流れてきたのか?…
逆も、また然りだ」


渋い顔の上役達


「火影は、知っているのか?」


シカマルは、ニヤリと笑い


「うちの火影は、そんなに 了見が狭くないんで
他里だから、とかの理由で
頭ごなしに反対するような人では、無いんで」


シカマルの、挑戦的な物言いに
我愛羅が ため息をつく


ゆっくりと立ち上がり話し出す


「うちと、木ノ葉は 同盟国だ
オレが風影の間は、それは変わらん」


我愛羅は、シカマルの方に 視線を向けると

「こいつは これでも、将来
木ノ葉一の参謀になる男だ」

「…これでも、は 余計だっつうの」

シカマルが、そっぽを向き 小声で呟く


「火影殿も、暫くは おいそれと変わらないだろう
そこで、同盟を確かなモノにする為にも
今回の件は、良いのではないか と考えるが」


「大名の方は、それでは済まされないのでは…」


「これだけ、砂の里 前風影の娘… 俺の姉を
愚弄したんだ
有無は、言わさぬ」


「しかし…」

口を挟む上役に


「それに オレは、前回の事
許しては いない…
オレの断りもなく、テマリに直接話しをし
里の為だ…とでも言ったんだろう
勝手に事を運んだ事…」

我愛羅の顔がキツクなり
上役達の方を、殺気の含んだ目で 睨む


「……」







風影室に戻った シカマルと我愛羅に、
“カンクロウが戻った”
との伝令がくる


城門まで行くと

カンクロウが、門前に待機していた医療班に 
テマリをあずけている所が見えた


シカマルは、駆け出し
医療班について病院に行く


カンクロウは、我愛羅を見つけ 声をかける

「そっちは、どうなった?」

「片付いた… 話は、ついたか?」

カンクロウが、少し悲しげに

「まぁな…」

と、返事をかえした




病室のベッド脇の丸イスに座り、テマリの手を握る

眉間にシワを寄せる シカマル


医療班によると、
精神的なダメージは、計り知れないが
身体的には、打ちみが酷い
以外は、外傷はナシ
お腹の子供も、問題ない

すぐに、目覚めるだろう

との事


その報告を聞き、安堵する気持ちと

目の前のテマリの状態を見て
哀しい というか 
悔しい というか
苦しい というか 

なんとも言い表わせない感情が、
胸の奥底から込み上げてくる




病室のドアが開かれ


我愛羅とカンクロウが入ってくる


シカマルは、丸イスから
立ち上がると
頭を、深々と下げた


「…今回は、本当に…申し訳なかった…」


「もういい…」


我愛羅は、シカマルの肩に触れた後

テマリへと、歩み寄る

その腕に、触れた


「…これか…」


その言葉に、シカマルが反応する


「…これって、やっぱり」

カンクロウが、答える


「テマリは、いくら聞かれても 父親を証さなかったらしい…
その痣は…、お腹の子を庇ってじゃん」


テマリの腕・足には、無数の痣があった

多分、お腹を庇って
丸くなっていたのだろう

肘から下 膝から下 が、特に酷かった


シカマルの顔が歪む
眉間のシワは、一層濃く
強く握られた拳は、色を失う


カンクロウは、子息が語った事を
シカマルに伝える


思いもよらなかった話しに、さっきから感じている
この色々な感情が
溢れ出てきそうで

キツク目を閉じた


「最後に、テマリへの伝言で… “恨んで欲しい”…ってよ」


少しの沈黙の後

我愛羅が、自傷の気味に
呟く


「恨んでもいいから、それでも… 忘れないでくれ…か…」






ベッドから、密かな嗚咽がもれる


「テマリ…」


シカマルは、テマリの手を取り

しっかりと握る


「…大丈夫か?」


「私は… いろんな… 人を傷つけて… ヒドイ女だ… 幸せになる… 資格なんて… 」


「イヤ… 子息も、それは
望んで無いじゃん
愛情と憎悪は、紙一重だけど
愛情が勝ったから、
テマリを返してくれたんじゃん
愛情が勝った奴が、相手の幸せを 願わない訳無いだろう」


我愛羅は、カンクロウの肩を叩き


「後は、奈良に任せよう」
と、病室を出て行った

「奈良、テマリを頼んだじゃん」






静まり返った病室内


テマリのしゃくりあげる声だけが、こだまする


シカマルは、ベッドの縁に腰掛けると
優しく髪を撫でる


「…泣くなよ」


「…私は… お前も… あの人も… 傷つけた… 私は… 間違ってばかりだ…」


シカマルは、布団ごと
テマリを包み込む


「間違ってねぇよ…
お前は、“里の為”って思ったんだろ?
そういう真の強い所
俺は、好きだぜ
多分、向こうも そう思ってるだろうよ」


テマリが、強く首を横にふる


「違う…忘れる決心をしたのに… お前を… 忘れられなかった事…
あの人を… 愛せなかった事…
どちらも… 出来なかった…」


布団の中で、膝を抱えて
丸くなる テマリ


「それを言うなら、俺も一緒だ
テマリを、忘れられなかった し
引き留めるすべも、
奪いに行く 勇気も
無かった」


「私が… それを、望まなかったから…だろ…」


ようやく、嗚咽が納まり
落ち着きだすテマリを、

自分の方に向かせ
視線を合わせる


「幸せになろうぜ
哀しませた人の分も、
離れていた分も、
全部 含めてな」


そっと、テマリのお腹に触れる


「お前が守ってくれた この子は、俺達の宝物だ
お前と2人 必ず一生守るから
じゃないと、申し訳ない」


テマリの瞳から、涙が溢れる


「だから、泣くなって…」

シカマルが、頭を掻く


「私は… 幸せになっても… いいのか?」


シカマルの胸に置かれた
手が、震える

抱きしめる


「当り前だろ、
我愛羅のカンクロウの砂の皆の
… 子息の為にも
俺の為にも
幸せになってくれ」


耳元で囁かれる 言葉に


小さく頷く テマリの額に、優しくキスを落とした





→ 4へ  後、ほんのちょっと(^o^;

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