12/28の日記

20:59
初恋 〜シカマル〜
---------------





俺があの人と初めて会ったのは、俺が新卒で入った会社で
広告業界なその会社は、人使いが荒く
ぺーぺーの俺は、馬車馬のように働いていた

俺の上には、おっかねぇ女上司がいて
顔つきのキツイその人の、眉間にシワを寄せた姿しか
見たことが無かった

そんな“おっかねぇ女”との印象しか無かったあの人を、街中で見かけた

男連れ

男が居たんだ…
そんな感じは、微塵も見せなかったし
あの気の強さでは、行き遅れのお局状態だと思っていた俺は、なんだか酷くびっくりしたのを覚えている

そしてあの場面

男から平手打ちを食らったあなたの、潔い笑顔…

なんだか俺には、その笑顔が泣き顔に見えて
目が離せなかった

…そんな顔もするんだ…

と、無意識に呟いていた

後から、その男がフィアンセだと知り 更に驚く

そう言えば… 左手の薬指に品の良いダイヤがハメられている事に
今更ながら気づいた

それから、気になり
目で追うようになってから
頭からずっとあんたの事が離れず

背伸びして、
俺にしては頑張ってモーションかけるも 
こと事く、かわされ
大人の女の余裕とガキな俺の差は、なかなか縮まらなかった

あの日も、思い切って何度目かの想いを伝える
「俺、そろそろ本気出していいですか?」
俺の言葉に、いつもとは違い
少し寂しそうに笑っていたあの人

俺がその理由を知るのは、翌週で
いつもと違う反応に、もしかしたら脈アリなんじゃないか、
などと思っていた
俺の期待は、見事にうらぎられた

配置替えの内示があり
あの人は、俺の上司では
無くなった

後から聞いた話し
俺の数々の行動が、部下に手出ししている と問題になり 
責任を取らされたらしい事を知る

あんたは
「出るクイは、打たれるもんよ」
なんて
笑うから、俺もつられて笑ったら
「奈良…そんな顔するな…」
頬に触れられた指に 指輪がナイ事に気づいた

その手を、必死に繋ぎ留めたかったケド

抱き締めようとした俺の腕を擦り抜けて
あの時みたいに潔く笑ったあんたと
二度と逢う事は無かった…


俺の初恋だった





end

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ