01/15の日記

02:03
罪と罰 A 
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私は、木ノ葉側に捕えられた


普通なら、どんな咎めを受けてもおかしく無い状況だが


火影の計らいなのか
整えられた部屋への軟禁となっていた


こんな大事を興したと言うのに、見張りも少なく
尋問される事も無い

それが返って私を不安に駆り立てていた


備え付けのベッドに力なく座る


近くのテーブルには、真新しい着替えと
用意された食事が手つかずで冷えきっていた


思考は定まらず
ただただ、ベットにかかる真っ白なシーツをぼんやりと見ていた


ふとよく知る気配に、身体が揺れる


「テマリ…」


名を呼ばれるが
顔を上げる事が出来ない


「…テマリ… こっちを向け」 


ゆっくりと声の主を見る


「…我愛羅…
…教えて欲しい
何故、私は…
何も聞かれない?
どうして…咎めを受けない?」


「テマリ… おまえのその顔では、話を聞くどころでは無いだろう」


ゆっくりと諭すように話す我愛羅の言葉に

今、自分はどんな顔をしているのだろう… と
頬を擦った

ひんやりとした頬の感触と、指を伝い滴り落ちる雫に

初めて、自分がボロボロに泣いていた事を知る


窓に映る自分の姿


赤茶げた染みが、広範囲に広がり肌に張りついた服

袖口は、大量の液体がカサカサに乾燥し

赤茶げた粉のようなものが、身体を動かす度にパラパラと落ちる

それは、乱れた髪にも付着し 髪を染めていた


酷い有様に、咄嗟に髪を整えようと撫でつけるが
金色の髪を、益々変色させていくだけだった


自分の手の平を見る

いく筋もの跡を残し爪の先をも染めるものに
耐えきれなくなり

声を張り上げた


「うっ…うわぁーーー!!」


拭った顔を、赤く染めていく手を
キツく握り締めガタガタと震えるテマリ

紅い液体が、物凄い速さで漏れ落ち
自分の衣服を伝う感触が
リアルにフラッシュバックしてくる

こみあげる吐き気に、身体を折り曲げ
口元を押さえる


「落ち着け!」


我愛羅の低い威圧的な声

ビクリと動きを止める


「…詳しい事は
お前に着いていた2人に吐かせた
火影殿にも報告済みだ」


まだ両肩を抱え膝頭に額が着くほど
身体を折りまげ密かに震えながらも


「…我愛羅… すまない…」


やっと吐き出せた弱々しい言葉。


我愛羅は、真っ直ぐにテマリを見据え 話し出す


「テマリ… 俺は、おまえが頼れ無いほど
力の無い風影か?」


先程とは変わって落ち着いた声が降ってくる

首を横にフル私に尚も


「じゃあ、なぜ話さなかった」


「…我愛羅が…ずっと…風影で居られるように…」


「尾獣を抜かれた俺の立場が、不利だとでも言われたか?」


テマリの言葉を遮り言い放つ我愛羅の声に、怒気が滲む


とっさに目を見開き我愛羅を見る

真直ぐなその眼差しに
視線が絡むが、すぐに反らしてしまう

昔から、我愛羅は真っ直ぐ射ぬくような瞳で人を見る

以前は、それがとても怖く
恐怖を感じていたが

風影たる威厳も増した今は、違う意味で 怖いと感じる


我愛羅は、小さな溜息と共に


「おまえは、砂での監視下に置く事になった
明日の朝出立する、仕度をしろ」


そう言い残すと、テマリの前から立ち去った


  “砂に戻る…”


そんな事が、許されるのか…?


ますます働かなくなった頭を 抱え込む


私がした事は…

――許され無い…



次の日の早朝


見張り役に連れられ、火影の前に跪く


「テマリ…
おまえを、利用するとは
敵も考えたな…」


綱手の握りこぶしが、ワナワナと震える


「ウチの参謀は、秀でていたからな
隣国には、1番やっかいな奴だっただろう
でも、なぜ…留まれなかった…
おまえには、我愛羅も私も居たのに…」


力なく微笑むと、今更だな…と小声で呟やき背を向けた


テマリは、深々と頭を下げると 
その場を後にした


里外れの門の前で、我愛羅が待っていた


「もう二度と来る事は無い
よく目に映しておけ…」


我愛羅の言葉に、グルリと辺りを見渡す


「…我愛羅…
悪いが、先に帰っててくれないか…」


怪訝な表情の我愛羅を、抱きしめる


「…私には、おまえが1番大切だ…」


言い残すと、風と共に去ってしまった


「っ…テマリ!死ぬなよ!」


珍しく動揺する我愛羅の姿を、去りぎわに見る


“大丈夫だ…”


自分に言い聞かせるように、小さく呟く



テマリは、よくシカマルと来た 里が一望できる
小高い丘に佇む


死ぬ… 自ら命を経つ…

そんな事、考えた事も無かった


常に死が隣り合わせの日常

自分の最後は、戦地でだと

そう思って育ってきた


敵に経たれるコトはあっても、自らなど…


――敵に経たれる

私は… 敵…

シカマルの命を経った…


自分の手のひらに残る赤い跡を見つめる


急に ずっと側にあった気配が、ガサリと音を立てた


「いつまで着いてくるつもりだ…」


テマリの背後から現れたのは、年端もいかない子供


頭のてっぺん辺りで一本に結ばれた髪が、彼を彷彿させる


一瞥しただけで、また真っ直ぐ前を見据えるテマリに


「父さんの仇だっ!!」


と、手裏剣を投げ
クナイを向け 突っ込んでくる


テマリは、避ける事はせず
ただそれを受け止めた


「おまえは、センスが良いな…
おまえの父親にソックリだ…」


初めて人を刺したのだろう、手足がガタガタと震えていた


身体に刺さった手裏剣を、1つずつ抜く
大量の血を流れ出るが、気にすることなく全部抜くと


「…生憎だが、おまえ如きに殺られる私では無い」


青ざめた顔でも、キック睨んでくる小さな瞳が
目つきの悪いあいつによく似ていた


「サッサと行け!」


緩く扇子で扇ぐと、ゴロゴロと後ろに転げ


一度、キッとテマリを睨みつけてから 口惜しそうに
涙を浮かべて駆け出していった


その姿が見えなくなったと同時に、膝から崩れ落ちる


幼いながらも、的確に急所を狙ってくるシカマルの子に この里は、安泰だな…

等と、場違いな事を思って笑ってしまった


若い頃のシカマルが、自分の師の仇をとったように


親の仇と、私をとる


この忍びの世界の免れないカルマ…


せめて、あの子の記憶に
“人を殺めた”ことが色濃く影を落さない事を願う


人を殺めた罪悪感や恐怖に苛まれるには、あの子は
まだ幼すぎるから…


最後に残る力で手のひらを見つめる


シカマルの血がこびりついたその手を
自分の傷口まで持っていき


今まで言えなかった
愛しい人の名を呼んでみる


――シカマル…


やっと言えた名前に、心の底から安堵する


願わくば…
来世では、忍びなどというものでは無く

普通に産まれ、普通におまえと出逢い
普通に暮らしたい

…半分、おまえの請け売りだがな…


ゆっくりと微笑むと



そっと目を閉じた







end





暗い…(;^_^A

ハッピーエンドでは無くて、すみません(- -ゞム

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