07/21の日記
00:02
踏み出す 〜アスマ仇討前夜〜
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やっと1人になれた…
安堵の溜息を吐くと 芝の上に寝そべる
先日の酷い雨のせいか湿気を含んだ芝が纏わりつくが
特に気にせず、その里が見渡せる場所の景色を見降ろした
この時間、もう里の明かりはぽつぽつとしか灯っておらず
邪魔な明かりが少ない分 星空がキレイに見えた
先ほどまでの慌ただしさで疲れた頭を休める
急ぎの詳細な報告書
代わる代わる現れる同期連中
俺の事を心配して、だろう ありがたかったが
少し疲れた…
自分の腕を枕に、星空を見上げる
空には、もう夏の大三角形が顔を出している
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あれが、こと座のベガ だろ あっちが、わし座のアルタイル そして、はくちょう座のデネブ
この稼業、星の位置で方向を知る事も多い
よく覚えとけよ!
ついでに言うとな、あのベガとアルタイルは
七夕の織姫と彦星と言われてる
年に1度、あんな遠い距離から逢いにきてるんだよな
今年は、逢わせてやれるといいな…
なんて、その髭面に似合わないロマンチックな話しをし出し
その星を見上げる神妙な横顔を思い出して 笑った
「何、1人で笑ってるのよ 」
現れた2つの気配に
「 …来たのかよ 」
頷いた2人
そのまま、ゆっくりと俺の横に並んで寝そべり
3人で星空を眺めた
「わぁ〜 星がキレイねぇ 」
暫く星を眺めていたイノが
「分った!シカマル笑ってたの、あの織姫と彦星の話しでしょう」
プッと噴き出したチョウジに キタナイわねぇと怒るイノ
いつもと変わらないこの空気に スゴク安堵して
また笑った
静寂が流れる
イノの手が俺の手に触れギュッと握ってくる
多分、チョウジの手も握っているのだろう
俺達は、3人でギュッと手を握りあった
微かに震える指先が、自分のものなのか
イノのものなのか分らなかったが
暫くそうして手を繋いで夜空を見ていた
いつの間にか白みはじめた空に、カチッ
煙草の紫煙が揺れる
「そろそろ行くか… 」
「そうね… 」
「おう… 」
そして俺たちは一歩踏み出す
end
アスマの仇討前夜
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