08/07の日記

00:58
偶然と必然 〜キバ〜 
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「おまえ… 今日、ヒマ…? 」



夏休みもあと2日の夜


そう電話で呼び出されたのは、クラスメイトの犬塚キバで


私達は面識はあるけれど 話したコトも数える程しか無く


たまに、仲のよいサクラを通して 1言2言話すぐらいで…



なのに… なんで…???


電話口で堅まる私をさっしたのか


「兎に角待ってるからなっっ」なんて場所だけ告げていきなり切られた電話に


「えっ、… 一方的な 」と一人突っ込んだ



暫く考え込んだが シカトもなんだなぁ… と


取りあえず、適当に準備をし 指定のあった河原まで歩く


家から数分で着くその道を、のん気に歩いていると


夕日に照らされた自分の影が長く伸びる


更に、カナカナカナ…なんて虫も鳴きだすもんだから


残り少ない夏休みが、急にとても惜しくなった



「今年こそ、浴衣着て彼氏と花火を見に行く!!」


夏休み前に、去年叶えられなかった願いを 勢い込んでサクラに話したら


「ハイ ハイ!もう何度も聞いてます〜」


と、片手であしらわれた


年頃の乙女には切実な願望なのに…


ふくれる私に


「今年は、大丈夫じゃない… あぁ、彼氏と… は微妙かもだケド」


なんて言うから


「女友達と、とかじゃないんだよ〜 彼氏と!なのっ」


大きな声で反論していたら


「だからっー まぁっいいや… じゃ!あたしバイトだから」


薄情な友の背中と そんなやり取りとを、思い出した


「結局、今年もダメだったじゃん… 」


うな垂れながら、今年こそは! と買った新しい浴衣が不憫でならなかった



気を取り直して、そろそろ着くな 辺りを見渡してみる


河原の土手から少し低くなった所に 1本大きな桜が植わっていて


そこに来い と言われたが…


キバの姿を探す


すると、なぜかキャンプ用のテーブルとそれを挟むようにイスが2脚用意してあり


それを、微妙にズラしたり 戻したり


ちょっと離れ、両の指で四角とか作って
片目を瞑っりながら 覗いてみたりして


納得できないのか、またイスの所に戻り


また、ズラしたり 戻したり と繰り返していた


やっと納得できる位置になったのか


遠目でも、ご満悦な表情が分る


あ!何か思い出したらしい


ベタに、手をポンと叩いたりしながら


慌てて、コンビニの袋から ジュースと紙コップを取り出し


机の上に置き また 位置を確認している


「多分、ジュースは俺が注ぐから こっちの方がいいな 」


背後から 自分が考えてたのと同じセリフが聞こえてきて


ビックリして振りかえると


委員会で一緒な
見なれたちょんまげ姿があった


シカマルは、顎でキバの方を指しながら


「アイツ、かれこれ3時間ああやってるからな 」


とゲンナリ顔


3…3時間…


時間の長さにビックリしてしまった


あれ…? 


「シカマルは、どうしてここにいるの?」


こんな時に こんなタイミングで…?


キバが何してるか知って る…?


不思議そうな顔の私を、クスクス笑って


「めんどくせぇケド、キバに頼まれたんだよ! 
あっ、おまえレモンティとミルクティどっちが好き?」


なんて、 今なんでその質問!? て事を聞かれたが


取りあえず 好きな方を答える 


「レモンティ…」 


シカマルがニヤニヤして、 キバ、当たったな


なんて呟くもんだから 益々なんだか分らなくて…



「ねぇ、シカマル… 何が起こっているの…? 」


そう尋ねたのに


「じゃ、コレよろしく 」とスーパーの袋を渡された


「イヤ、シカマル? あの… 」呼び止めようとしたケド


「兎に角、それキバに渡してやってくれ 」と
土手の階段を下り 行ってしまった


何… 何が起きてるの…?


ちんぷんかんぷんな私の思考は他所に 自分の名を呼ぶ
大きな声が聞こえる


「おーいっ!こっちこっち!! 」


キバが満面の笑みで手を振っていた



私は、ゆっくりと土手の坂を下りていく


途中、雑草に足を取られそうになった私に 駆け寄り


その差し出された腕に ガッシリと支えられたりして


「大丈夫か? 」なんて八重歯全開で笑った顔が近くて 不覚にもドキドキした


顔が熱い


私の手を引きながら、ゆっくりと土手の坂を下ってくれ


イスの所まで来ると またニカッと笑って


「座って!座って! 」とイスの座面をポンポンと叩いた

 
そのキバの勢いに流されて 素直に座る


「あっ、それ何?…買ってきてくれたの? 」


私の下げていた袋に気づき
またまた満面の笑み


「あ!これはシカマルが… 」


ビニール袋の中身をゴソゴソと出しながら


「おまえ、レモンティが好きだったよな?」


と聞かれたので 首を縦に振ると


「だよなぁ〜 」と大袈裟に頷きながら また笑った


今日は、キバの笑顔をよく見る日だ と思った


ん? あれ? なんで知ってんだろ…? レモンティ…


「なんで… 」そう聞こうとした時


沈む夕日をバックにデッカイ声が聞こえる


「キバ〜 うまくいってっか〜!! 夏休み前からの計画なんだから 失敗すんなよ〜! 」


チャリンコをこぎながら
ナルトが土手上から、叫ぶと


キバは、真っ赤な顔になって


「うっせ〜っっ!!」怒鳴り返していた


ナルトは、茶化すだけ茶化して


「腹減った〜 」と帰っていった



「 …え!? … 夏休み前から… って? 」


キバは、益々赤い顔で


「俺、超カッコ悪いじゃん… 折角色々考えて
カッコよく決めようと思ってたのによ…」


鼻の頭を掻きながら 照れるキバが 可愛い… と思った


て… あれ? もしかしてこれは…

なんて、呼び出しの意味を考え出した時


「おまえ… 浴衣着て花火したいって言ってたから… 」


ん? 犬塚くん? 肝心な所が、ちょっと違うよ…


「 … あれ?…てか、なんで浴衣じゃ無いの?」


えっ!?


「…言われて無いも…ん… 」


キバは、青褪め 「ヤベ!言い忘れてた! 」なんて大袈裟に頭を抱えだして
暫くブツブツと、1人反省会状態だったが


数分もすると 


「まっ、いいか!いい感じに暗くなってきたから、花火しようぜ!」


アッサリと元気を取り戻し 会った時同様の笑顔を見せた


私は、少しムクれて


「花火は、見に行きたかったのっ 
今年こそ彼氏と浴衣着て
花火大会に行きたかったのっ」


キバは、屈んで覗きこむように目線を下げ

私の膨れた頬っぺたを、ツッツキながら


「知ってたから、花火しようと思って誘ったんだぜ 」


なんて照れ臭そうに言いながら、花火大会じゃなくて コンビニの花火だけどな
と頭を掻いた


浴衣じゃないし、彼氏でも無いじゃん
と心の中で突っ込んだが


「彼氏役は… 俺が立候補する…」


耳まで紅くなりながらも、真剣なキバに

私もつられて紅くなってしまった


イキナリな出来事に、ビックリしたのと 恥ずかしいのとで
どうしたものかとモジモジしていると


さっき渡されて、ずっと手の中でグルグルと弄ばれていた
レモンティに目がいく


「なんで私が、レモンティ好きな事 知ってたの…?」


キバは、また照れ臭そうに

「前、サクラと一緒に居る時 奢れってセッつかれてミルクティ奢ったの覚えてるか?
あん時、サクラが先にミルクティって言っちまったケド
おまえレモンティて言いかけただろう
それに、前1人で図書館に居るとこ見かけた時
自販機でレモンティ買ってんの見たからな 」


ちょっとビックリした…


いつも一緒に居るサクラ達女友達は 断然ミルクティ派だった為
普段は合わせていたし


委員会で一緒になるシカマルでさえ 奢ってくれる時は 毎回ミルクティで


そういえば、あの質問の時 驚いた顔してたっけ


クスクス笑う私に、不思議そうな顔のキバ


コロコロ表情が変わって、ホント… 犬みたい


私は、キバの頭を一撫ですると 


「着替えてくる… 」と、立ち上がった


益々?な顔のキバの耳元まで背伸びし


「浴衣で彼氏と、だからね 」と囁くと


真っ赤な顔で 「…おっ、おう!」と嬉しそうに答えた


駆け出す私の背後で 「よっしゃーっっ!!」とキバの雄たけびが聞こえて


なんだか、あと2日の夏休みが とても楽しみになった






end





おまけ


「キバ、その夏休み前からの計画によると
この後の予定は、どうなってたの?」

「えっと、花火をしながらいいムードのところでチュウするかな 」

悪戯っぽく笑うキバのほっぺたにキスすると

「一応、計画通りにね… 」

と私も照れくさくて笑って誤魔化したのに

顎を掬われ 

「俺の計画だと、そっちじゃなくて こっちなんだケド… 」

と唇を奪われた

恥ずかしくて、ドキドキしてる私の耳元で

「俺の計画だと、この先もあるんだケド… 」

なんて言いだすから

ゴツンと頭を叩いてやった

「調子乗り過ぎ!」

イテェー なんて大袈裟に頭を撫でていた手が

私の背に回り抱きしめられる

「分った!計画は一時中断するから… もう一回… 」

唇が再度重なる

名残惜しそうに離れた唇で

「やべ〜っ!俺 我慢できっかな〜っっ」

なんて不穏な事を叫ぶもんだから またゲンコツをお見舞いした

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