10/19の日記

22:27
幻影     →無理矢理注  初小隊長任務後 
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あのころの俺は、弱かった…


大人ぶってはいたが、
自分の足で立つコトもやっとのガキで


何処でも良かったんだ

逃げ込める場所なら、何処でも


だから手近にいた
おまえに逃げちまった


おまえの 
ぶっきらぼうなのに、弱ってるヤツを見捨てられない優しさを 利用して


拒まないおまえの所為にして


八つ当たりのように乱暴に抱いた


無理に押し倒し、その纏う服を剥いでいく


「なっ、何をする… 」


そんな小さな声に、震える華奢な身体と怯える翡翠色の瞳


そんなのは、全部見ない振りをして


ただがむしゃらに、自分の不甲斐なさを 情けなさを消し去りたくて


求めて 貪って 吐き出して 


そこに、優しさなんてモノはカケラも無く


初めてだった俺は、おまえを気遣うどころか


心も身体もキズつけちまって 


我に返った時には、苦痛に顔を歪めながらも
冷静なテマリと


シーツを染める赤に


青褪める俺…


おまえは「気は済んだか… 」


服を整え


何事も無かったように 微笑んだ



なにやってんだ…  俺は…


 ――情けねぇ


俺は、忍びと言う覚悟も その重さも 分って無かった  


イヤ、正確には『分ったつもり』でいただけだ


“死”そんなのは、こんな稼業やってりゃあ
当り前に隣り合わせにあって


自分が、いつか戦闘で命を落とす事も 分っていたし
腹も括れていた


しかし、それが自分に近い人間の“ 死 ”となると 

全然… 別もんだった…


俺の括った腹なんて、緩くて

自分のコトなら、いくらでもどうにでも諦めがついたが


俺が任されたのは 初めての小隊の長  


今まで当たり前のように傍にいた仲間が 自分の采配一つで  命を落とす


仲間の命の重さ  それを失う事の怖さ


迷う 迷う 迷う  どれが最善か  どうしたら守れるのか


人の命を預かるそんな力量が俺にあるのか…?


ましてや、俺の預かる命は ダチのだ
幼い頃から共に過ごした親友達


采配1つで変わる生死のボーダーライン


考えろ!落ち着け
最善策は…


重圧に吐き気が込み上げる


震える足 背筋を流れる嫌な汗


心底 怖い と思った


策士だなんだともてはやされていても


結局俺ができたのは、“仲間を信じる事”


こんな奴、忍びに向いてねぇ


今後もこんな思いをし続けるなんて…


俺には、 無理だ…


親父の言葉も、五代目の言葉も アスマの言葉も


皆、分ってんだ  頭ん中では


なのに、心がちっともついていかねぇ


自分の中で、消化できねぇ
何かを、どうしようもなく持て余して


そっから逃げるように、おまえを抱いていた
卑怯な俺



明け方近く、白い靄のかかる中


俺は、急いで木々を蹴り駆けていた


後方から、医療班が俺を制する声がするが


気にせず、何かに追われるように走り続ける


腕や足が痛むが、そんなコトは関係ない


チャクラが残り少なく、ヤバイ気もしたが
全部使い果たし 最悪死んでも構わないとさえ思っていた


辿り着いた先で、蘇生を受けるネジが視界に入る


一向に回復しない呼吸や心音 


もうどれだけの時間そうしているのだろう


その場の緊迫感にゴクリと息をのむ


目の前の光景が受け入れられず


視線を反らしたいのに、できない…


医療班のリーダーらしき奴が、滴る汗と共に首を横に振った


すべての医療行為の手が止まる


ウソだろ… 呆然と眺める事しかできない俺… 


そこに、担架を担いだ医療班数人が合流する


心臓が、ドクリと音をたてた


担架の上を覆い尽す白い布


まるで、何かを隠すように…


その担架から、零れ落ちる腕に
見覚えがあった


緑の袖から伸びる 見慣れたハズのその手が


あまりにも… 白くて…


怖くて 怖くて  叫び出しそうだった



いや、多分… 実際叫んで起きたんだ


ぐっしょりと汗で濡れた身体を、おまえが擦ってくれていて


「大丈夫か?酷くうなされていた… 」


そう心配してくれる手の温もりが、酷く生なましくて


苛立つ俺のその感情のまま 有無を言わさず また 


その身体を、組み敷いた


どうして、おまえはそんなに俺に優しくするのか


なんでこんな俺に、そこまでするのか


色んな感情がグルグルとうずまくケド


悪夢が、夢である事に 安堵する気持ちや


俺自身が、生きている事を実感する為に 


あいつが、里に帰る日が来るまで


毎晩毎晩 求めた



「おまえは、良くやったよ…」と、半ば同情的な里の連中や 


よく知りもしないのに「これから、もっと頑張らないとなっ」などと叱咤してくる大人とか


「ありがとね」と繰り返す、チョウジの母ちゃんだったり


もう、誰も俺に構うな


ほっといてくれ


こんな… 情けなくみっともない 俺を…



そんなホント、ガキな思いばっかで


毎回組み敷かれるおまえは… さぞ俺に呆れていただろう


それでもいいと、そう思ってた


逃げれるなら どうでもいいと


俺にとっては、ただの現実逃避の行為だと


好かれようが、嫌われようが 関係ねぇ


そう思っていた



なのに、あいつが里に帰る日


酷いコトをしたと言う自覚は、充分にあった俺は


謝ろうとおもっていた


最後に謝って 


それで、チャラにしようと 


他里の人間だ、もう関わる事もナイかもしれねぇ


そんなムシの良いコト考えて


なのに、謝ろうと口を開きかけた俺に


「…奈良シカマル…おまえのコトが、 好きだった… 」


綺麗に笑って 瞬身で消えたおまえの後ろ姿に


なんだよ… 


俺は、自分の目頭が熱くなり 


ボタボタと雫が地面に吸収されるさまを


他人事のように見ていた







end



☆コメント☆
[丸] 02-04 12:04 削除


リアルですね(;_;)
悲しいけど、とても
素敵なお話でした(泣)

[きょう] 12-11 01:21 削除
てましか好きやぁ;;

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